夫婦ですが何か?




一応彼は私の体を気遣ってくれたわけだ。


確かに善意でした事にこの仕打ちはいささかやり過ぎだったのだろうかと小さく反省してみる。


そう、小さく。


だって、善意だろうが人を羞恥に晒したのだから。


それでも善意は善意。


ありがとうは言わないにしても何か形で示さなければ。


そして考えた末に自分が出来る事は限られている。


でもきっとそれは突破口になると、不貞腐れている彼に視線を向けゆるゆると声をかけていった。




「夕飯・・・何が食べたいですか?」




当たり触りも無い普段の会話。


こうしていつも彼のリクエストを聞きそれを作る日々。


いつもと一緒。


そんな風に話しかければ明後日の方を見つめていた彼のグリーンアイがチラリと戻ってすぐに外れる。


それでも・・・、




「・・・・・フグ唐、シジミのみそ汁」


「了解です」



しっかり返された言葉。


そう、こんな態度であっても彼も私と気まずいままは苦手なのだ。


上手い事釣れたと満足してその身を立ち上がらせ始めると、不意に思い出したように再度彼の声が響いた。




「あっ、でも、いいや。やっぱりいらない」


「・・・・はっ?嫌がらせですか?」


「・・・・・・出来合いのものでいい。料理なんてしなくていいよ具合悪いのに、」



言いながらようやく戻ったグリーンアイが言い聞かせるように私をまっすぐに見上げ。


さすがにどう返すべきかと迷って見つめ返していれば、先手を打ったのは彼。



「って、言うか・・・。作ったら明日休業だから」


「・・・・今日1日はそれでいくつもりですね?」


「だって千麻ちゃんには仕事関連でしか抑制出来ないじゃん」


「まぁ、仕事しかすることがないんで、」


「もっと重要なことあるじゃん」


「・・・・」


「俺と愛しあーー」


「副社長、仕事お願いします」



さも当然のようににこやかに両手まで広げてきた姿にもう溜め息すら出ない。


ただ冷静に、もっと言えば冷めすぎた感覚でそれを言い放ち両手を広げた姿を無視してくるりと背中を向けると。


彼のボヤキ・・・。


ではなく、今までいなかった存在の笑い声が耳に響いて今度こそ溜め息が出た。



「ははっ、全然相手にされてないんだな茜」



言いながらいつの間にか入口横の壁に寄りかかってこの夫婦漫才を傍観していたらしい男を見つめ、すぐにその注意を口にして牽制した。