そう、身を預け信用し眠ったのが最後。
信用した私が馬鹿だったと酷く後悔した。
徐々に戻る意識の中でさっきとは違う揺れ方にしばらくはぼんやりと身を預けていた。
それでもザワザワと賑やかな音が耳に大きくなるにつれて意識の覚醒。
そしてどうも安定感のない自分の浮遊感にはっきりと目蓋を開ければ一瞬の眩しさに目が眩み、それでも入りこんできた声に目を凝らした。
「あっ、やっとお目覚め?ハニー」
間抜けで非常識でクサイセリフを持ち前の美麗さでカバーして言いきった男が爽やかな頬笑みで私を見降ろしグリーンアイを細める。
一瞬呆気に取られ不動になるも、すぐに周りに走らせた視線でそこが見慣れた会社のメインロビーの中央当たりだと把握した。
瞬間に感じる女子の怨念。
そして少女漫画でもあるまいし現代社会でお姫様抱っことかかましてきた非常識な男への呆れとそれを大きく上回る怒り。
『ハニー』じゃねぇよ!
心で怒鳴り現実ではその感情を命一杯乗せの平手打ち。
鳴り響いた音と女子社員の悲鳴とどよめき。
多分一瞬で今日のトップニュース化し噂の中心になるネタを提供したと思った。
そして今は上階であるお互いのデスクある部屋でお互いの不満をぶつけていたわけだ。
「殴らなくてもいいのに・・・」
「言葉で何度言っても聞かない獣には力で分からせようかと」
「鬼嫁」
「反対側もいっとく?ダーリン」
「・・・・・ところで、・・・大丈夫?」
「・・・はっ?」
「体!この騒ぎの元凶になった体調を心配してるんだよ」
未だ不服そうに声を響かせていた彼に対抗して返していれば、不意に入り込んだ言葉に思考が追い付かなかった。
そうして何の事だ?と怪訝な顔をすればはっきり響く自分の体調への労わり。
表情が不機嫌なままだったからすぐに気が付けなかった彼の気遣いに、理解すれば眉根を寄せ続けているわけにもいかず。
少しばかり狡いと感じながらも熱を下げるように息を吐くと言葉を返した。
「・・・・多少は、おかげさまで僅かでも取れた睡眠がよかったのかと、」
「ん・・・よかったね」
「・・・・・・お気づかいどうも、」
「・・・・」
ああ、不貞腐れている。



