「スーツに皺がーーー」
「いいって、」
「どうせすぐに着きますかーーー」
「千麻、そんなに臨時休業希望か?」
「・・・・」
くそ、今日は絶対にこの手で脅しに来る。
渋々口を閉ざすと満足げに小さく笑う彼に気がついた。
でもその表情は見えない。
今も私の視界を彼の手が覆っているから。
多分・・・・光りを閉ざして眠りやすくしてくれている。
そして今日も程よく香るほろ苦い甘い匂いにどこかリラックス効果を感じて、ゆっくりと息を吐くと力を抜いて自らその体に寄りかかった。
「じゃあ、少し・・・・」
「ん、おやすみ・・・・」
自分で睡魔を受け入れてしまえば面白いほど簡単に意識が遠のいていった。
ああ、車の振動が程良く気持ちいい。
このまましばらく着かなければいいのに。
そんな事をうっすら残る意識で思いながら沈んでいけば。
「悪いけど・・・適当に遠回りして」
ああ、遅刻・・・してしまいーーー。
うっすら聞き取ったのは彼の声だったはず。
それでも確認も非難も出来ずに私は意識を手放した。
「・・・・いや、・・・確かに驚かせたのは認めるよ」
「・・・・」
「でも、善意じゃん?好意じゃん?なのに何でそんな怒るかなぁ・・・」
「・・・・」
「そして・・・コレもさすがに酷くない?」
そう言って不服そうにぬれタオルで頬を押さえる彼に無言でタオルにくるんだ冷却材を渡した。
「人を公開処刑するからでしょう」
「だって千麻ちゃんぐっすり眠ってたからっ、抱きあげても起きなかったしそのまま運んであげようって善意じゃん!!なのに何で?!あんな会社のロビー中央当たりで思いっきり副社長が平手打ちされるって逆に公開処刑だよ!?」
「・・・・・私をまたあの女の執念嫉妬の渦に沈めたいと?」
「・・・・・す・み・ま・せ・ん・で・し・た」
一瞬考え込み彼もさすがに記憶の回想及んだ近しい記憶。
だけどもやはり面白くない感情を掻き消す事も出来ず可愛げのない皮肉交じりの謝罪を私に向けるとプイッと視線を外した。



