「ちょっ・・・鞄、」
「ん?だって千麻ちゃんまた車で手帳見ようと思ってるでしょ?体調悪い時に酔ったらどうするの?」
「耐え抜きます!」
「わぁお、男前~、その辺のリーマンより気合あるよねぇ」
「もうっ、私の仕事なんですよっ!?邪魔しないーー」
「チッ・・本当ーーーー」
ただでさえ本調子でないのにからかうな。
そんな怒り半分で鞄の奪還に躍起になれば耳に響いた舌打ちと低い声。
直後にグイッと力任せに車内に押し込まれ、シートに倒れ込んだ体を驚きのまま起こそうとすればすぐに押し戻されグリーンアイの威圧。
覆いかぶさるように上から鋭く見降ろして、その口元には小さく弧を描く。
「言う事聞け。反抗的なら、いっそお前を縛る会社なんか臨時休業にするぞ・・・千麻」
「・・・・・」
「仕事がしたいのなら・・・・社内だけにするんだな」
「・・・・はぁぁぁ、・・・・・・あなたは本気でしかねないから逆らえない」
前例がある分ここは大人しく言う事をきくしかないと降参を示せば、にっこりと微笑んだ彼がようやくその身を起こし私の体もまともに座り直させてくれた。
すでに私達のやり取りなど慣れている運転手の堺さんは微笑ましいとばかりにルームミラーで確認しているし。
彼が何やら御機嫌でドアを閉めると車はようやくゆっくりと走りだした。
そしてすぐに彼の行動は正しいと理解する。
ああ、少し・・・・頭がぼうっとする。
頭痛薬のせい?
いや、もしかしたら本当に熱が上がってきているのかもしれない。
確かにこんな中でいつもの様に手帳の文字を追っていたら完全に酔っていたかもしれないと理解すると同時に。
少し・・・そう少し・・・着くまでの間眠ってもいいだろうか。
ぼんやりとそんな事を思いながら重たい目蓋を半分ほどあけて耐えていると、突如頭の後ろから回り込んだ彼の手が私の視界を覆う。
何事かと思った瞬間には頭を引き寄せられトンと彼に寄りかかる様な形になった。
そして外されないままの手。
「なっーー」
「いいから寝てろって。・・・・昨夜、あんまり寝てないんでしょ?」
「・・・・」
ああ、それは否定できない。
バレてもいたのか。
確かになかなか寝付けずに寝苦しさをあのベッドで耐え抜いていた一夜。
その反動が今まさに来ているという現状。



