そしてまた話の論点がずれていると、今回は彼の方が一息吐くと話を戻した。
「結論、千麻ちゃんはもっと俺に甘えるべきだと思います」
「・・・こんな私の給料では絶対に住めない様なマンションの最上階で食費、水道光熱費、家賃全て賄って頂きそれに甘んじて生活している私が甘えていないとでも?」
「そんな・・・身も蓋もない自虐的な・・・。千麻ちゃんは居候じゃなく俺の奥さんなわけでしょ?」
「はい、だから奥さんらしく早くキッチンの鴨をさばいてしまいたいと・・・」
「さばくって・・・・、えっ?まさか獲ってきたんじゃないよね?」
「・・・・残念ながらスーパーですでに下ろされた肉です」
「よかったぁぁぁ、マジにキッチンで生々しい解体ショーがーーーって・・・そうじゃなくてね、」
「はい、」
いつの間にか脱線していた話にすかさず軌道修正した彼が頭を抱える。
いや、今外したのは私じゃないぞ。
そんな事を思いながら腕を組んでその場に立ち彼の反応を待ってみる。
「夫婦なんだから甘えて頼ってほしいんですよ。俺としては」
「・・・ダーリン・・・」
「うん・・・」
「じゃあ、今から私の代わりに食事は全部ダーリンがつくっーー」
「あ、無理無理、俺恐ろしいくらい料理の才能ないから」
甘えろというから無理難題をぶつければ、案の定悪びれもせずにっこりと微笑み「問題外」だと手を振る彼。
「チッ・・・役立たず」
「千麻ちゃん!?今めっちゃ辛辣な一言言わなかった?!」
「耳鼻咽喉科に行かれては?」
「うわっ、俺の耳が悪いと!?」
「これ以上遅くなるのもなんなので、もう鴨調理に行きますから」
もう漫才に乗る気はないとぼやく姿を振り返るでもなくキッチンに向かった。
そしてブラインドの【せい】で光が感じられなくなった分不意打ちの雷鳴がガラスを揺らすほど鳴り響く。
思わず眉根を寄せ舌打ちすると、感じる苛立ちを調理にぶつけてやり過ごした。



