「・・・っ・・狡い」
「・・・・はっ?」
触れることなく代わりに耳に響いた声に目蓋を開けながら怪訝な声を返してしまった。
そして捉えた姿は何故か不満げなしかめっ面。
さすがにその心中は読めず、首をかしげて眉根を寄せると。
「そうやってあっさりキスするの許して、俺が逆にしないの狙ったんでしょ」
「・・・・私ってそんなキャラですか?」
「ついさっきまでそうやって俺をからかってたでしょ?その手には乗らないし」
フッと口の端を上げ作り上げた余裕見せ私から離れる姿を無表情で見つめてしまう。
いや、本気で今はそのままの意味だったのに。
まぁ、いいか。
特別したかったわけじゃないキスがまた見送りになり、再び勘違いな理解をしプイッと横を向いた彼を頬杖を突きながら見上げてしまった。
それにしても・・・してしまった。
この、少し前までは子憎たらしい上司であった男とキスを。
まぁ、両方とも私の悪戯な気まぐれであったけれど、本当に嫌悪抱く相手ならそんな事はしない筈。
そしてその流れも自分がリラックスしているときにしかしない筈なんだ。
つまりは・・・・私はこの生活に慣れ順応し結構楽しんでいるということなのか。
自分の中でそんな結論づいて小さく「ふぅん」と声にしてしまった。
当然目の前のこの男が聞き流すはずもなく。
「・・・何?」
「いえ、・・・・ダーリンって可愛いなぁ。と、」
「っ・・・馬鹿にしてる?」
「そんなこーーー」
体がビクリとした。
言葉を言い切るより早くガラスまで響かせた雷鳴。
光るのと音がほぼ一緒に感じられるほど速く大きかった音にさすがに小さく「キャッ」と耳元に手を添えかけながら後ろの窓を振り返った。
雷がスタートの合図のように降り始めた雨がポツリポツリ窓に当たり始めたかと思えば、すぐに滝のように降り注ぐものに変わる。
そして再びピカリと光った稲妻に身構えて身を縮めれば、さっきに負けず劣らずな雷鳴。
「わぁ、雨とか久しぶり。ってか雷とか久しぶりに聞いた」
「・・・そうですね」
「さすがに雷じゃあ怯んだりしないんだねぇ、俺のイケメン奥さんは」
「・・・・・・雷より厄介で危険な人と同居してますから」
「危険人物にしてるのは無防備に誘惑する千麻ちゃんのせいじゃない?」
「こんな色気のないパンツに何誘われてるんですか?」
そう言って自分が穿いているパンツを確認する為に頭を下げパーカーの裾を軽く持ち上げた。



