「なんだか、私とのキスに異様な理想を掲げていらっしゃるようだったので奪ってみました」
「っ・・・!!」
「残念ながら・・・・コレで記念すべきファーストキスは終わりです。初夜に続いて散々な【初】体験、ご愁傷様です」
愛らしき妻が悪魔に微笑む。
俺に言葉の毒を落として。
「・・っ・・・千麻ちゃんのアホォっ!!」
「何とでも・・・、人の好意を無下にしようとした夫に情なんて湧きません」
言いきると余韻も無くパッと俺を突き離し、長い髪を揺らしながらベランダに歩く後ろ姿。
相変わらず艶めかしい露出した足。
その後ろ姿にもグッと惹かれ、最悪にも唇に予想外の甘い毒を与えた彼女。
依存する。
滅多に口にできない。
それでも甘くて甘くて・・・危険な味のする果実。
だからこそ恩恵を受けた時にその甘さに過剰な糖度が増す。
今も残る・・・啄んだ時の感触。
「・・・っ・・・狡い・・・」
動悸が・・・激しい。
そして愛おしいと同時に悔しいと思うのは、彼女が感情乱すことなくさらりと俺から離れたから。
そして夜風に長い髪を遊ばせ自分のグラスの中身をごくりと飲むとゆっくり振り返り見つめ、・・・誘う。
「飲む?・・・ダーリン」
敵わない。
ねぇ、ハニー、
大人しく俺に愛されろよ。
絶対に永久契約にしてやる。