一瞬ドキリとして体を起こして振り向いてしまった。
だけどもデジャブ。
さっきの様に誰もいない空間に、気のせいではない匂いが鼻に残って疑問に染まる。
でもすぐにその答えを得た。
ああ、そうか・・・。
当たり前だ。
彼の服なんだから。
匂いの元を探せば自分が愛用している彼の服。
蹲った瞬間に強烈に本来の持ち主の気配を強めたそれに睨みをきかせ、すっと立ち上がるとキッチンに向かった。
もう、いい。
そんな勢いで日本酒の瓶を取り出し手にすると食器棚に手を伸ばしグラスを取った。
そして数歩。
手にしたグラスに違和感覚えて確認するように持ちあげ落胆したように目蓋を閉じた。
「・・・もう、・・・・・あーーーーー、もう、もうっ・・・」
『毎晩・・・一緒にお酒飲むの・・・・・俺、かなり楽しみにしちゃってるんですよ・・・』
「私もだっ、馬鹿っーー」
だって、偽れないじゃない。
その証拠がこの手にある。
無意識に手にしてしまった・・・、
私と彼、2人分のグラス・・・。
愛なんて知らない。
でも言えるのは・・・。
彼と毎夜酌み交わす晩酌の時間は酷く好ましい。
それだけ・・・。
「1人じゃ飲めない、・・・ダーリン」



