そのまま歩いてマンションの敷地を離れて行く後ろ姿を見つめ、追いかける事もせずにぼんやりとしてしまった。
【浮気】・・・・してきます。って・・・・。
ナンパでもしに行ったか?
ぼんやりとその詳細を考え込んで、もしそうなら成功して、更に行けば明日の朝まで帰って来ないだろう。とも結論づいた。
だってあの男はそれこそ女のツボを心得ている。
初対面であっても彼の優しい強引さに心惹かれて全てを許した女の多い事。
もうこの5年で指折り数えたのは最初だけ。
記憶もしていない。
みんなみんな彼の外見や上辺だけの対応に惚れ込んで全てを知った気でいた勘違い女ばかり。
彼は強く美しく優しく自分を守ってくれる人なんだと。
そういう印象を作りあげた彼も彼で、凄いとも思うけれど。
だからこそ・・・本心まで曝け出した芹さんの存在が現れた時は驚いた。
ああ、こんな風に彼が自分を見せる女の子がいるんだなぁ。と。
そして、彼女もいつだったか私に言ったのだ。
『茜さんは・・・寂しがり屋。
社交的なのは寂しいから、陽気なのは人を引きつけるため。
嫌味は照れ隠し・・・もしくは、知られたくない本心の偽装』
彼自身だと思った。
それが彼なのだと。
決して強くないあの人はいつだって作りあげた鎧でその身を守ってる。
彼は寂しがり屋の臆病者なのだ。
「・・・・困った・・・・人」
小さく息を吐くとシートに身を預ける。
しばらくそのまま外の景色を眺め、何をしているのだろうと体を起こすとようやくドアに手をかけた。
恋しかった外の空気を吸い込んでしまうと、さっきまでの重苦しい時間が夢だったかのようで。
それでも現実だったと感じる彼の不在。
そしてずっと耳に残っている彼の言葉。
「【今更】なの?って・・・・」
【今更】よ?ダーリン。
5年。
そう5年も隣にいたくせに一度だってそんな感情抱かなかったじゃないお互いに。
一度思い返す様に記憶を反芻して、確かにそんな感情はなかったと再確認。
冷静に思い返しても確かに彼に恋心は抱いた事がないと数回頷いて納得する。
・・・・なのに。
なんだろう。
少しザワザワと心が騒ぐ。
当然だと思っていた自分の考えがどうやら彼を傷つけた現実。



