しんっと耳に痛い静寂。
その痛さに身を任せ、怯むでもなく彼を見つめていればゆるゆると怒気薄れるグリーンアイ。
いや、怒気はあるのかもしれない。
でも勝ったのは落胆と悲哀。
私を非難するように力の入った感じに見つめていた姿がシートに脱力し、そのグリーンアイが窓の外に移った。
何を思っているのか。
そしていつまでこの堂々巡りの討論が為されるのかと浮上した疑問。
そのタイミング。
「・・・・・・千麻ちゃんの・・・・」
「・・・・」
「千麻ちゃんの作るご飯の味、・・・かなり好きなんですよ」
「・・・・」
「それを作ってる後ろ姿を見ると抱きしめたくなって、」
「・・・・」
『セクハラです』
「手帳に集中してるとその視線が欲しくなって手が伸びる」
「・・・・」
『迷惑です』
「いつだって無防備な部屋着スタイルにドキドキもするし心配もする。
隣に無防備で寝られたら自分を抑制するのに苦労するし・・・・」
「・・・せーー」
「毎晩・・・一緒にお酒飲むの・・・・・俺、かなり楽しみにしちゃってるんですよ・・・」
「・・・・・・・・・・・はい、」
ようやくグリーンアイが戻った。
もどかしく切なげに。
どうして伝わらないのかと、もがいて・・・。
もがいて・・・。
「そう感じる女の人に恋愛感情抱くのは【今更】なの?」
苦しい・・・。
呑まれた・・・。
彼の【寂しい】の意思表示に。
言われた言葉に反応も出来ず、ただ揺れるグリーンアイを見つめ不動になる。
何か返すのが正解。
なのにまともに頭が働かずただ軽く開いたままの口に空気が入り込みどんどん水分を奪っていく。
そして更に言葉を弾きにくくなるのに。
無言は時に不都合な解釈になる。
言葉より残酷で大きく痛みを与えるんだ。
返されぬ私の反応に深くゆっくりと息を吐いた彼が一瞬きつく目蓋を閉じ、ギュッと眉根を寄せるとその目を開いた。
「わかった、」
「・・・・はい?」
「・・・・浮気。・・・・・してきます」
「はっ?」
っと、反応した時には運転席の扉が開かれ彼が外にその身を出したところだった。
何事?と、驚愕している間に無情に響くドアの閉まる音と振動。



