夫婦ですが何か?




ああ、なんか軽く久しぶりですね。


そしていつも通りと言えばいつも通りの無表情ですが、若干不機嫌に見えるのは私の気のせいでしょうか。


捉えた姿は記憶鮮明だけども久しぶりな雛華さんの姿で、無表情に腕を組んでリビングの扉の枠に体を預けながらこちらの様子を見下ろしている。


あれ?


確か・・・ロスにいた筈では?という疑問はすぐさま彼が解明してくれる。



「ひ、ひーたん、・・・ロスにいたんじゃ・・・」


「・・・・・いたよ。でも・・・深夜に情緒不安定な奥様からの泣きギレで『別れてやる!』のラブコール入ったから、父さんに空港まで送ってもらって速攻で帰ってきたんだよ」



その不機嫌そうな一言に笑ってはいるけど青ざめている彼女の姿を確認し、そんな彼女を目を細めて見下ろす雛華さんに何故か私も緊張してしまう。


何か・・・フォローを・・・、



「よ、よくここだと分かりましたね、」


「だって、約12時間のフライト終えて家に戻れば誰もいないし、実家に電話してもいないときたら茜ちゃんのところくらいしか思いつかなかったし」


「そう言えば・・・よくこの階まで・・・」


「茜ちゃんから合鍵貰ったままだったし」



ああ、どんな言葉を重ねても不機嫌そうな雰囲気継続。


多分フライト疲れも相まって、ご機嫌ななめも最高潮なのだろう。


でも、芹さん大好きなこの人にしてはいささか態度がきつくも感じる。


すっかり雛華さんの出す空気に呑まれた大人3人が言葉を失い沈黙すると、ようやく溜め息交じりに体を起こした雛華さんがその足を芹さんに進める。


スッと目の前に立った瞬間に、青ざめた芹さんがビクリと反応して。


今にも殴られるんじゃないかとあらぬ危惧をした瞬間。


スッと動いた雛華さんの腕。


思わず『あっ、』と声を上げてしまったけれど予想したような音は響かず。


むしろ予想したような動きを見せなかった雛華さんの手はポケットから何かを取り出すと芹さんの頭にポンと置いてからその身をかがめて彼女を覗き込んだ。



「芹・・・・とりあえず、情緒不安定の解明しておいで」


「は、はい?」



疑問を浮かべたのは彼女だけでなく私や彼も同じく困惑し、芹さんが頭に乗せられた長細い箱を視界に下ろすと呆然と不動になった。


それも・・・私達も同様。


一人冷静な無表情で彼女を見つめる雛華さんを除いて。


そして青かった芹さんがみるみる顔を紅潮させていくとようやくその口元に弧を浮かべた雛華さんが芹さんの頭を柔らかく撫でる。