決して馬鹿にして言った意味じゃなかったけれど、タイミングと言い方が悪かったらしい。
怒りが解けどこか寂しげな子供の様だった姿が一瞬で元の不機嫌に再構築された。
「・・・っとに・・・・ムカつく・・・」
ボソリと、多分私にぶつけるというよりは思った感情が零れたように悪態をついた彼。
そして何か言いたげに眉根を寄せながら口を開きかけたのに、すぐにキュッと唇を噛みしめ運転席にドサリとその身を降ろすと頭を掻いて。
もどかしい葛藤を言葉にはならなかった音で口から吐きだすとハンドルに突っ伏した。
その一部始終を無表情でただ傍観してしまった私。
何とも言えない沈黙続く車内で微妙な夫婦のもつれが継続する。
ああ、何でだろう?
今まで5年も一緒にいてこんな風に歯車がかみ合わない時など一度も無かったというのに。
どうも【夫婦】という枠に入ってからいつだって不協和音の様な軋みを感じて。
いつだってギシギシと不穏な音を立てるそれがちょっとしたはずみで今の様に歯車が外れて動かなくなる。
うん・・・、
やっぱり、
「離婚しよ」
ぽつりと私も思った結論を口から零してしまった。
それはただ彼を嫌いとかではなく、【元々の規約通りに】という前提込みの言葉で。
彼と私はやはり仕事上のみの関係の方が綺麗にくるくるとそれが回ると思ったから。
そして今現在すぐにそうしようという意味ではなかった。
けど・・・。
「・・・・・・はっ?」
響いた声にこれまた現実に引き戻される。
入りこんだのはそれはそれは驚愕と焦り感じる困惑の物。
それでも自分は焦るでもなくゆっくり声に反応して彼に視線を移せば、声のままに酷く驚いている姿。
何故?
「・・・・何か、変な事を言いましたか?」
「・・・・【離婚】って・・・何?」
「驚かれますか?私はその事に驚きますが」
何を言っているのだろう?だって、コレは最初からの契約ではないか。
『結婚して』
そう言われた時からの決まりごと。
あなたにそう言われたすぐ後に私は言ったじゃないですか。
『1年契約なら』



