なかなか・・・、浮れた足取りねダーリン。
そんな事を彼の後ろ姿を翠姫を抱きながら追ってついて行き、彼がしっかり施錠された扉を開錠し満面の笑みで扉を開いた瞬間。
「いらっしゃーーー、」
「茜さぁん!!」
驚いたのは私。
でもその驚きはどうやら双眸見開き私を振り返った彼も。
何が驚いたって、扉を開けた瞬間にどこか甘ったるい声で勢いよく彼に抱き付いてきた芹さんに。
その勢いに見事押されよろめきながらもなんとか態勢を保った彼が、さすがに困惑気味で彼女を見つめる。
その彼女の背中には3歳になる日華が軽く眠そうな目でぼんやりと揺らされている。
どういう状況かと普段の彼女からは想像も予想も出来ない現状に困惑していれば、いち早くその原因を察知したのは現在も尚抱き付かれている彼。
「えっと・・・・もしかして芹ちゃん・・・酔ってる?」
「聞いてくださいよぉぉ、雛華さんがねぇ!?」
「うんうん、ひーたんの馬鹿の話はとりあえず中で水飲んでからにしようか、」
と、宥めるように彼女に優しく告げながら、チラリと私にチェイサーを促す彼。
それに従ってキッチンに向かうと大き目のグラスに氷を入れてミネラルをウォーターを注ぐ。
丁度そのタイミングに彼に支えられながらリビングに入りこんできた姿。
ああ、ダーリン。
相変わらずよそ様の奥様にベタベタと馴れ馴れしい接触です事。
支えるだけであるなら他にも場所はあるだろうに、彼が選んだのはそのライン明確なウェストで。
そして困ったように眉尻は下げていようと、どこかその距離に浮れている様にも見える。
相変わらず彼女が大好きだって事ですね。
一瞬その手の置き場に眉根を寄せて、でも仕方のない事なのだと納得するとソファーに座った2人に近づき彼女の前に水を置いた。
それを僅かに赤ら顔の彼女がふにゃりと笑うと素直に飲んで、対峙して座っていた彼のさも愛おしいものを見るかのような眼差しに軽く呆れる。
確かに・・・確かに可愛いですけどね。
女の私でさえこんな風に無防備に酔って笑う芹さんにちょっとキュンとしましたとも。
だから尚の事彼女に好意を抱いていたこの男には効果がありすぎたのではないだろうか。
「で?ひーたんがどうしたって?」
にっこりと微笑みながらの声は浮れた時の声音であると、嫌でも理解する付き合いの長さ。