そして降参と言った癖になかなか開かない唇とチラリチラリこちらを確認する視線。
本当に往生際が悪い。
呆れてこちらから促そうと唇を僅かに動かした瞬間。
「・・・・触ってたよ」
「はっ?」
ようやく響いた答えらしき言葉。
それでもあまりに唐突で結論のみの言葉に眉根を寄せて疑問を向けると、入浴のせいか隠していた事の影響なのか僅かに紅潮し不本意だと歪む表情。
そしてぽつりと補足。
「さっき・・・・、千麻ちゃんが言ってたじゃん」
「何を?」
「最近触れ合ってもなかったって」
「ああ・・・・・・、
まさか・・・・夜な夜な意識のない私を犯しーー」
「違うっ!いや、・・・違く・・・も・・ない?あ、当たらずしも・・・遠からず・・・・・って、お願い!!そんなドン引きな目で見ないでっ!違うっ!もっと、ピュアでプラトニックなんだよぉ!?」
「すみません、DVにピュアもプラトニックも存在しませんから」
「ちょっ、待って・・本気で嫌悪の眼差しで離れないでっ!?」
「・・・もう一回しっかり体洗い直そうかな・・・」
「だ、だか・・っ・・・キス、・・キス!!」
強調した言葉が見事浴室で反響して静まっていく。
しっかり最後に鮮明に残された言葉に怪訝な表情で彼を捉えれば、言い切るまでは勢いあった姿は、みるみる羞恥で表情を崩す。
眉根を寄せつつ口元を手の甲で覆って、不愉快そうに見せる癖にその顔は赤い。
『だから言いたくなかったのに』
そんな心の声も聞こえそうな彼の姿にしばらく呆けて、それでも理解した事実を再確認のように響かせた。
「つまり・・・・、寝ている私に夜な夜なキスしていたって事ですか?」
「わざわざ再確認する!?」
「いや、ただ一言【キス】だけでは細かい内容が判断できずだったので」
「っ・・・意地悪。・・・・寝顔は恐ろしく可愛かったのに、」
「成程・・・つまり起きている今の私に魅力は感じないと?」
「な、何でそうやって揚げ足ばっかとるんだよ千麻ちゃんは!?」
「【何で】?そんなの・・・・照れ隠しですよ」
「・・・・・・・はっ?てれーーんっーー」
私の一言に一瞬はまた嫌味だと自己判断したのか顔を背け、それでも聞き入れて冷静に受け止めれば自分が思ったようなそれじゃなかったのか驚き露わに私を振り返る。
その瞬間にすかさず唇を重ねて顔の距離を埋めた。
だって・・・多分少し顔が赤かった筈だから。



