私が何をしても気にいらないというのなら、いっそ車を止めて放りだしてくれればいいのに。
車でドアtoドアされるよりこの晴天の下を歩く方がよっぽど気楽で自由なのに。
チラリと見た窓の外にオシャレな雑貨屋が流れていく。
ああ、今度時間があったら行ってみよう。
そんな風に現状を忘れる逃避の様な思考を巡らせて、何とかその居心地の悪さを誤魔化していった。
大した距離でもないマンションへの道のりが永遠に感じるほど長いと感じたのに、やはり気のせい。
結局終始無言で走った車は確実に距離を縮めていたらしく、すでに馴染んできていたマンションに入りこむと早く車から降りて彼と別空間にその身を置きたいと切に思った。
車がその動きを止めればすかさずベルトを外し、彼がベルトを外した時には私は扉を開けその身を出しかけていたところだった。
だけど一瞬外気に触れた体が予想外の力に捕まり自分の体温で暖められたシートに戻される。
そして身を乗り出した彼が開いていたドアを閉めるとそのままの位置で私を見降ろした。
そして落としたのは、、
「浮気者・・・」
唖然茫然・・・。
『浮気者』?
それ、私に言ったんでしょうか?
衝撃的な一言に双眸見開き彼を見上げれば、彼の指先が私の首筋に触れ静かに滑り落ちる。
そして服に指先がかかると一瞬止まり、それでも服に指先をかけて軽く引き下げた。
大した露出じゃない、軽く下げられただけ。
そう自分が刻んだ印を確認するために。
今も紅くはっきりと残る彼の所有印。
それを私にも理解させるように指先で触れるとゆっくりとグリーンアイを絡ませた。
ここまでくればもう驚きはなく、それこそ無表情で彼を見つめ返す。
だって、感情的に怒る方が彼にとっては思う壷で、むしろ私のこういった無関心な態度の方が彼を乱しやすいのだ。
そしてそれは成功。
僅かだけれど彼が眉を動かした事を見逃さない。
そして無言を貫き視線だけで『なにか?』と返せばもう彼の沈黙は続かないだろう。
「ねぇ、・・・【大道寺 千麻】さん」
「・・・・・・・はい、」
「・・・【大道寺】・・なんですよ」
「はい、」
「もう、不本意だろうが契約だろうが今現在俺の奥さんなワケですよ・・・・」
「・・・・存じてますが?」
「言ったよね?結婚式で・・・・もう、雛華のところにはいけないって、」
「・・・何が仰りたいんですか?」
いや、もう言いたい事は分かっている。
答えは単純明快で実に子供っぽい物なんだ。



