覗き込んで言葉をかけた瞬間に初めてはっきりと開いた翠姫の目蓋。
あどけない眼差しでぼんやりと目の前の私達を捉えているんだかいないんだか。
でも私達ははっきりと捉えたその眼差し。
そして悔しいかな私が追い詰められる現状になった確証。
チラリと視線走らせた彼の意地の悪い表情と言ったら。
「出来る男・・・・ね」
「・・・・」
「それは・・・・、こんなグリーンアイのいい男じゃなかったですか?」
「どうだったでしょうか・・・」
胸に抱く翠姫の目を示しながらニッと微笑む彼は勝者の眼差しだ。
悔しくも喜ばしい事に綺麗なグリーンアイを覗かせる我が子は確実に彼の子だと証明される。
いや、当然彼以外父親に当たる人はいないのだけど。
そして当然のように手を伸ばしてきた彼に今度は渋る事なく翠姫を慎重に手渡して、同じように優しく抱き上げた彼が柔らかく微笑んで見下ろす。
「翠姫・・・永遠は優しかったかな?」
そう言って頬をくすぐるように触れている彼は早くも父親の顔だと感じる。
ぼんやりと不思議な感覚に満ちてその光景を眺めていれば、何かを思い出したように彼が表情を変えて翠姫を私に差し出して。
「翠姫にプレゼントがあったんだ・・・」
「プレゼント?」
「良かったよ。無理矢理にも今日ひーたんのところに取りに行って」
ああ、例の野暮用・・・。
すぐに思い出したそれに記憶を回想していれば、一瞬席を外した彼が小脇に何かを抱えて戻ってくる。
詳細に疑問を感じていれば、可愛らしい包み紙の何やら中身は本らしい。
物それをいそいそと開封する彼は酷く楽しそうに口の端を上げ。
時期尚早。
すでに絵本でも買ってきたのかと軽く呆れも感じたのに、開封した彼が表紙をじっと確認し満足そうに微笑むと私に差し出して見せてくる。
その瞬間に呆れなんて飛ぶ。
表紙に描かれたのは黒いフワフワの見覚えのあるウサギ。
それを確認すれば自ずと内容は理解して、驚愕の眼差しで彼のグリーンを見上げる。
悪戯に揺れるグリーンアイは今回ばかりは不快でない。
むしろ・・・、
「翠姫にね、永遠の事を話して聞かせたくて・・・、姿は無くても家族だって教えるにはあの話を絵本にしてみようかと思って発注してたんだ」
「何故・・・雛華さんのところに?」
「ん?ウチだと受け取るの千麻ちゃんだからバレたら面白くないなぁって。・・・でも・・・、また発注しなきゃだなぁ」
言いながら翠姫の頭を撫で、私に視線を移してクスリと笑う。
ああ、そうね、
新たな話を作り出していたものね。