泣き声も程々に自分の腕に抱く存在を軽く貧血を起こしながら見つめてしまう。
さっきまで自分の中で慈しんでいた存在。
それをしっかりと腕に抱いて不思議な感覚に陥って。
でも響いた彼の声でようやく実感した。
「・・・・・翠姫・・」
こうして生まれ出て初めて呼ばれた名前の響き。
その瞬間に確かに存在したものなのだと実感して涙が零れた。
ああ、本当に馬鹿な悩みだった。
不安なんて何故感じたのか。
今こうして・・・・言い表せないくらい・・・愛おしいのに。
「・・・・翠姫」
名前を呼んだ瞬間に浮上した記憶が脳裏に広がる。
ああ、あれだ。
『永遠』
そう呼んだときに酷く似ている。
その存在を認めて受け入れるあの感覚。
自分の子供だと受け入れて愛おしんで、
そう意識してあの黒いウサギを探して視線を走らせれば、すでに動いていた彼がそれを抱き上げて語り掛ける。
「ありがとう・・・永遠。しっかり可愛い【妹】を連れてきてくれて・・・」
労いと報告。
そんな彼の姿に不覚にも胸が締め付けられて心臓が強く跳ねる。
馬鹿みたいだし、少し悔しい。
この男に惚れ直した自分が。
でも・・・この人がパパなのよ翠姫。
「2735g・・・程よい大きさだったのかな?」
「充分でしょう。何より五体満足で元気ですし」
「どっちに似てるかは・・・・いまいちわからないね」
「まだ産まれたばっかでむくんでますから」
「でも・・・・・・めちゃくちゃ可愛い」
あらあら、何て腑抜けた笑顔だか。
デレっとした表情で手を伸ばしてきた彼から咄嗟に庇うように翠姫を隠すと、当然困惑した表情のグリーンアイが見つめてくる。
何で?
そんな訴えは視線だけでは留まれなかったらしい。
「千麻ちゃん・・・何で?」
「いや、何かその浮れた笑顔にイラッとして」
「ええっ!?嘘っ、ちょっ・・抱っこしたい!抱っこさせてよ!?」
「・・・・なんか刷り込みの様にあなたのダメな部分が移りそうで・・・」
「酷い!!酷いよ千麻ちゃん!!」
「だいたい・・・あなたの子って確証もないし・・・」
「うっそ、このタイミングでそういうこと言っちゃう!?」
「翠姫~、あなたのパパはねぇ、もっと素敵な出来る人なーーーー」
「あっ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
優しく言い聞かすように、彼には意地悪にその言葉を響かせたというのに。



