「だ、大丈夫?千麻ちゃん・・・」
「・・・あなたから見て大丈夫に見えるのなら眼科をお勧めします・・」
「えっ!?産まれちゃう!?」
「・・・早く出てこいとかいうから・・・」
「俺のせい!?」
「あーーーーー、・・・っーーー死にそう・・・・」
「死んじゃダメだよ!?千麻ちゃぁん!!」
「死ぬか!むしろこれから少子化問題に貢献しようとしてるんですよ!!」
「じゃあ、また速攻で国に貢献しないとね」
「・・・・なんでそんなときだけ冷静に切り返すんですか!?」
と、陣痛に悶えていながらもアホ丸出しな会話を繰り広げていたら思いっきり運転手さんが噴いて小さく『すみません』と呟いた。
その後も時々小刻みに震えていたから思い出し笑いまでされていたと思う。
アホ丸出しな夫婦ですみません。
そうこうして病院にたどり着いた時には7センチまで開いていたらしい。
『もう頭触れてますよ』とか言われるけれど私にはまだまだ降りてきていない感じがして。
いきむのを我慢しての生き地獄。
勝手に口から零れる声と、痛みに悶絶して呼吸もまともに出来ず。
一瞬彼の存在なんかも忘れてきつく目蓋を下していれば。
頬を掠めるフワフワと感触のいい布地。
その瞬間に詳細は理解してようやく微々たる弧を描いて目を開ける。
光を取り込んだ目に入り込むのは黒いべロアのグリーンアイのウサギ。
「・・・・本には・・・『頑張って』はイラつく言葉だってあったんだけど・・・・」
響いた声にゆっくりと視線を動かしていく。
顔の向きも横からゆっくり上に切り替えていけばそっと頬に触れてくる彼の指先。
穏やかなグリーンアイ。
「・・・・やっぱり・・・・『頑張って』としか言えないや・・・」
困ったように微笑む姿に癒される。
ああ、大丈夫ですよ。
イラッとしませんから。
「・・・・・っ・・頑張ったら・・・・」
「うん?」
「・・・・頑張ったら・・・さっきの話の続き・・・作ってくださいね・・・」
「・・フフッ・・・陳腐でもいいの?」
「・・・・陳腐な方がいい・・・・・」
「・・・じゃあ・・・早く顔を見て抱きしめないとね」
彼の手が促すようにお腹に触れたとほぼ同時に波が来て目が眩む。
でももう・・・恐いとか不安はないから・・・・、
彼と一緒に愛してあげるから・・・・、
不完全でも・・・ママとして頑張るから・・・・、
顔を見て、名前を呼んで・・・・抱きしめさせて。



