そう、どうしても言葉だけだと愉快な戦争と化してしまうけれど、こうして触れ合う時だけはお互いに馬鹿みたいに素直に熱と感情を共有する。
だから彼に触れられて説得されたら、私はきっとよっぽどのことが無い限り言う事を聞いてしまうのじゃないかというほど。
言われるままに私のお腹を柔らかく撫でるぬくもりに素直に浸って体を預ける。
もうすでに張りは治まっていたのに、そして彼もそれは気がついていただろうに。
黙ってお互いに誤魔化したのは言葉の戦争の反動。
ただお互いに寄り添って自分たちの愛すべき存在を感じていたかっただけ。
ああ、少し眠い。
彼に体を預けその体温を感じていればどこか微睡んでくる感覚に目蓋は素直だ。
気張ってもじりじりと幕を下し始めるそれに光をほとんど遮ってしまった直後、パッと光を取り込んだ自分の目。
そして自然と落ちかけていた手をお腹に戻すとゆっくりと摩る。
「・・・・張ってるね。やっぱりいよいよかなぁ?」
「・・っ・・ん、少しずつ・・・強い・・・」
「千麻ちゃん、少し横になって眠れそうなうちに寝ておけば?出産になったらそれこそ体力必要なんだし」
「・・・・張りが強すぎて・・・」
ギュウっと締め付けられる感覚に動きを取れずに不動になって、軽く前のめりになってそれを逃す。
呼吸だけは忘れないように息を吸って吐いて、それでもしばらく繰り返せば波のようにスッと引いてしまうそれ。
力が抜けて体の自由が戻ってきたタイミングにそっと体を引き起こしに来た彼に視線を移すと。
「とりあえず・・・まだまだ判断しにくいしベッドに行こうか」
「でも、寝れそうにーー」
「はい、これは優しくて心配性な旦那様からの【お願い】と言う名の命令です」
「・・・結局【命令】ですか?」
「ここでの拒否権は認めないよ?元気な状態の【みずき】と対面したいのなら眠くなくても横にはなる事」
「・・・【みずき】の・・・為?」
「そ、【みずき】の為。・・・愛情たっぷりな千麻ちゃんなら俺の【お願い】に従うのが一番だって分かるよね?」
あっ、少し懐かしい。
だけど、少し違う。
一瞬そんな風に思った彼の表情はどこか勝ち気で我儘な会社の上司時代を彷彿として。
でも違うと感じたのは我儘に愛情を垣間見たから。
自己の為でなく他者の為の彼の要求。
それもそれが私達が成してきた事の中で一番大きな結果の対象の為で。
愛おしい我が子の為だ。
逆らえるはずがないじゃない。



