抜けたリングの穴の向こうで彼がニッと笑うのに完敗。
「愛情の死角・・・、」
そう言った彼が言葉の意味を示す様にリングの穴を強調しながら自分の指にそれを戻した。
付け根までキュッと戻された指輪を見つめ、軽く呆けてからの思考。
言わんとしたい事は分かった。
それも見事に分かりやすい例えばなしに反論もなく納得して悔しさも忘れるほど。
そうして茫然としていれば私らしくないと思ったのか、クスクスと笑った彼がキュッと私の体を抱きしめ肩に顎を乗せた。
「千麻ちゃんはね、その愛情大きすぎて自分の持ってる【ものさし】でさえ測りきれなくなってたんだよ。
でも、今ままで確かに明確に捉えていた物だから測れなくなった事に悪い解釈で愛情が無くなっちゃったんじゃないかって不安になってただけ」
「・・・・・」
「と、・・・俺は客観的視点でそう捉えて解釈したけど・・・・、有能な我が奥様は何か意を申し立てたい事ある?」
くそっ・・・。
その笑顔は少し嫌味だわダーリン。
『当たってるでしょ?』
そう言いたげにクスリと笑う彼の表情はさっきの穏やかに諭すものとは異なって、意地悪な瞳は私の不安の軽減を見事見抜いて揺れ動く。
そう、
悔しい。
そんな単純な事じゃないと宣言して反論したいのに、悲しいかなスッと軽くなってしまった胸の内に。
つまり・・・・納得して、自分でもそう解釈し始めているんだ。
それでもなんだか悔しくて眉根を寄せ視線を外せば小さく笑った彼の追記。
「・・・ま、・・・コレは俺に対してもそうだった過去の千麻ちゃんから学んで応用した事だけどね」
「・・っ・・・・」
「だから、千麻ちゃんの不安やそれによってのイライラや八つ当たりは可愛い屈折した愛情表現だと・・・・・少し成長した俺は余裕を持って受け入れられちゃったりするんですよ」
「・・・っ・・とに・・」
「ん?なになに?」
追記された言葉に困る程の彼の愛情を感じて嬉しいやら悔しいやら。
こんなタイミングに狡い。
完全にコレは負け戦だ。
相手は余裕にニコニコと微笑んで、子供の不満を聞き入れ諭した様な。
本当に・・・・狡い。
そう思った直後に感情のままに振り向きながら彼の胸倉をグッと掴んで引き寄せて。
驚いた彼の唇を奪うなり、隙間の空いたそこから舌を忍び込ませて密度を高める。
『待て!』の後の・・・濃密チュウ。
約束は守る女ですから。



