そして私に言葉を理解させるような間を与えて、諭すような言葉を告げた唇はチュッと首筋を3か所程口づけて印象を強める。
その彼らしい空気の作り方と甘えているんだか甘えさせようとしているんだかの絶妙な感覚に見事乗せられ目を細めた。
そんなタイミングも計ってか、そろそろ私が言葉の意味を自分で染み込ませたと判断しての続き。
「千麻ちゃんの【ものさし】は他人から見たら大きすぎて測りきれない。いつだって自分に厳しくて・・・そして自分でその縛りにがんじがらめになって」
「・・・・・性格です。仕事の上での向上ではその縛りが成長の糧になる」
「そっ、・・・仕事なら・・ね。だからこそ俺は千麻ちゃんを見初めて専属秘書にしたんだから」
「・・・・光栄な事です」
「いえいえ、」
ニッと笑った彼の唇がとうとう頬に触れてきて、啄ばむ様に耳元に移動すると耳朶を甘噛みしてくる。
「ねぇ、・・・夫婦って、・・家族って、仕事じゃないよ」
「・・・契約で結婚した経験ありの私達なのにそう言いますか?」
「だから・・・バツイチでしょ?」
クスッと響く彼の声に皮肉は無い。
責めているわけではないと自然に感じて素直に言葉を聞き入れる。
「完璧じゃなくていいんだよ」
「・・・」
「家族や愛情に完璧な形や答えなんてなくて、・・・いつだってみんな手探りに迷走してるんだよ」
「・・・答えのない物は・・・恐い」
「でも、・・・世の中ほとんどがそうでしょう?恐いけど・・・だから楽しくもあるんじゃない」
「っ・・・でも、・・でも・・・、私は、・・・愛情ある母親になれるでしょうか?
今だって・・、こうしてグダグダ悩んで迷って、今にも産まれそうな張りに怯えて、」
産むのが恐い。
産まれるのが恐い。
そんな事を考えて迷っている自分は愛情薄い女なんじゃないかと切なくて。
耐えきれない。と、目蓋を下ろすと耳に入りこんだ彼の吐く息。
呆れられたのだろうか?
彼が言った通り、がんじがらめの私の悩み。
優しく穏やかに的を得た言葉を紡いで、彼なりに私の心を軽くしてくれようとしていたのに。
情けない。
自分でそう悲観的になってしまうから彼の表情を確認する事も出来ず。
せっかく作ってくれたホットミルクが私のどうしようもない悩みの間に冷めた事すら悲しくなる。



