両頬をその手で覆い至近距離から見つめる雛華さんに、冷静になって理解すればすぐに血の逆流。
喉元熱くて息も苦しい。
心臓の鼓動が耳の奥にまで響いて。
やっと壊した彼への【好き】の感情が再構築されそうだと焦ってしまった。
焦って何とか打ち砕くのに、それを理解していない様にクスリと笑った彼が追い打ちをかけた。
「・・・・千麻ちゃんは可愛い。自分じゃわかっていないのかもしれないけれど千麻ちゃんは可愛いよ・・・」
だから・・・雛華さんの言葉には嘘が無いから即効性が強いんですって。
見事打ちこまれた言葉に体が熱を持って、自分の頬がみるみる赤くなるのを感じた。
情けない。
そう思って逸らしたいのに彼の手が触れている事実に愚かにも酔いしれた。
そして、いけないと分かっているのに思ってしまう。
欲しかった。
この純粋な姿が欲しかったと。
ああ、彼を非難できない。
未練がましいなんて笑えない。
私も同じ様な物じゃないか。
むしろそれを押し隠している私の方がよっぽどあさましい見苦しい女。
可愛くなんてない。
「可愛く・・・・ないです」
「可愛いよ」
「私は・・・・芹さんの様に素直で可愛くない・・・・」
「ああ、うん。芹ちゃんとは全然似てないよ千麻ちゃんは」
その言葉に驚きまっすぐ見つめ返すと、困ったように微笑んだ雛華さんが小さく『ごめん』と告げ、そしてすぐに続く言葉。
「芹ちゃんには似てない。・・・でも、可愛いは一つじゃないでしょ?
芹ちゃんに似てないから可愛くないわけじゃない。
千麻ちゃんは千麻ちゃんの魅力で可愛い女の人だよ」
風の様に自然で、乾いた喉を潤す様な綺麗な水。
そんな風に体に浸透する雛華さんの言葉。
自分の薄黒い感情さえも綺麗に浄化してくれるようで思わず眉尻を下げると、代わりににっこりと微笑み下ろしてくる。
「愛情も一緒だよ千麻ちゃん。愛し方だって一つじゃない。芹ちゃんに向けるそれと違うからって茜ちゃんが千麻ちゃんを愛してないわけじゃないよ」
「・・・・何を・・・」
「少なくとも・・・・茜ちゃんは千麻ちゃんを大切に思ってるって事。・・・・千麻ちゃんが考えてるよりずっとね」
「・・・・的外れ・・・」
「そう?悪いけど・・・、これでも千麻ちゃんよりもっとずっと俺の方が茜ちゃんと一緒にいたんだ。
だから知ってるし、分かる。あいつの性格も好みも・・・、なんてて言ったって・・・俺とあいつ・・・好み一緒だから」
そう言って複雑に微笑む姿に思わず口の端が上がった。



