かと言って、最初の頃の様にがっつりガードなわけでもなく。


こんな風に勢いの接触だろうと冷静になっても怯えたりしないはず。


つまりリハビリ自体は小さく小さく前進していて、抱きしめたり抱きしめられたり。


あわよくば・・・キスも。


今もめちゃくちゃに濃密なキスをしたい衝動を堪えると、【紳士】という言葉を念仏の様に頭で唱えて息を吐き。



「だから、・・・俺と一緒に暮らせばいいのに」


「か、雷は一時の危険。同棲は日々の危険」


「こんなに震えて怯えてるくせに嫌味なセリフは健在なんだ」



可愛くない。


でも、可愛い。


いつもとは違って嫌味も強がりにしか感じない今の彼女は何をしても可愛らしい。


そして、つい働いてしまう意地悪心。



「ま、【危険】な俺がくっついてたら不快でしょうから?」



ニッと笑って抱き寄せていた腕を緩めれば、ビクッとした彼女のタイミングに合わせて響いた雷。


すぐに痛いくらい抱きつかれたのは言わずもがな。


必死。


お風呂を嫌がる猫の様に爪を立ててのしがみつきに、思わず苦笑いでしっかり抱きしめ髪を撫でた。


そして視界で確認する彼女の姿にちょっとばかし余計な欲情。


相変わらず誘惑的な生足覗く部屋着スタイルで、俺に抱きついているせいか更に際どくラインを明確にして。


うん、


紫。


チラリと垣間見る下着にバカみたいにテンションの上がる俺はかなり末期だ。


そんな風に気分高まってしまえば抱きしめるだけじゃとどまれず。


流石に躊躇った唇は外して、彼女のこめかみにしっとりと唇を当てた。



「千麻ちゃん・・・、ね、とりあえず部屋はいろう?」


「そ、そうですね。・・・失礼しました」


「いや、俺としては抱きついて貰えるし、毎日雷でもいいくらいだけど?」


「・・・今度からは恭司に電話します」


「千麻ちゃん・・・、それはツン通り越して戦争ふっかけてるよね?」


「・・・・・」


流石にムッとする嫌味に表情は正直にしかめっ面で。


眉根を寄せて見下ろせば、押し黙って睨みあげてくる彼女がスッと離れて立ち上がった。


そしてフラつく足取りでリビングに向かう後ろ姿に呆れた調子で声をかけてしまう。



「千麻ちゃん、」


「かえ、帰りたかったらどうぞ。・・・私は平気です・・から」



意地っ張り。


足が震えてまともに歩けてないくせに。