驚愕と、追って歓喜だろうか?


はらりと彼から落ちたブランケット。


抜け出た彼がそれに近づいて覗き込んで小さく笑う。


嬉しそうに感極まって。



「・・・美味しいそう」



そう口にして私に笑って振り返る姿にこの時ばかりは素直に微笑み言葉を向ける。



「メリークリスマス・・・・ダーリン」



そう告げ、ゆっくり自分も彼の隣に立って作り上げた【絆】に視線を落としていく。


違う・・・・、作り上げたではなく【上乗せ】・・か。


彼の作り上げた不完全なそれを補い補助する私の魔法。


不格好で焼きすぎたアップルパイをレンジで温めカラメルソースとバニラアイスのトッピング。


苦さに甘さを上乗せしての不格好だけども現状望める絆の完成。



「言ったでしょう?【初め】から完璧なものは望んでいないと。・・・・初めから完璧な夫を目指さなくていいんです」


「・・・【初め】って・・そういう意味だったんだ。期待されてないのかと思って・・・ちょっと・・悔しくて・・・」


「・・・・・最初から完璧なあなたなんて困ります。うっかり惚れ込んだらどうしてくれるんですか?」


「いや、俺は最高ですけど?」


「私は最悪です。プライドが許しません」


「ええ~、俺どうすればいいわけ?向上目指していいの?それとも現状維持?」


「勿論、向上の方向で。私が言いたいのは・・・・、急いで一人で成長しなくてもいいという事です」



困惑する彼の鼻を戒めるようにキュッと摘まんで諭していく。


そう、


そんなに急がないで。



「・・・・・ゆっくりでいい。一人で作り上げる絆じゃなくて、私達はいつだってパートナーで。あなたが望む結果に私がサポートして今までだって過ごしてきたんです」


「・・・・つまり、一緒に補いながら作り上げたいと?・・・このアップルパイみたいに?」



彼が視線で【絆】の対象を見つめて笑う。


それを肯定するように口元に弧を描き、用意してあったフォークでそれを一口。


口の中で広がるアップルパイの食感と焦げた苦味とカラメルの苦味、それを緩和する甘いバニラの味とシナモンの香りが見事調和。


そう・・・これでいいのだ。


今は。


その味に満足すると再度フォークに一口取り出し彼の口元にゆっくりと差し出す。


躊躇いなくそれを口に含んだ彼が噛みしめながらそれを味わい満足そうに微笑んだ。