自分の手元の鍋から甘ったるい香りが漂って、でもすぐにそれを流しさる冷気に視線を再度彼に移す。
だけどもその姿はすでにそこになく、冷気を取り入れた窓から外のテラスにその身を移して空を見上げる。
ああ、寒いのに。
何も着ないで。
そんな風に呆れながらも手元に意識を戻して【魔法】の継続。
彼が求めた絆とは違うかもしれないけれど、私なりの絆の再現なのだ。
一度、拒んでしまった苦い記憶があるから。
今度こそそんな事は無いという意思表示。
出来上がったそれを手に、途中たたんでおいてあった大きめのブランケットを手に彼の姿を追って窓を開ける。
瞬時に感じる冷たい風に思わず目を細め、手に持っていたそれを近くに置くとブランケットを広げて肩にかけ、寒そうな後姿の彼に抱き付く様に巻きつけていく。
「フッ・・・千麻ちゃんって・・・時々絶妙に甘くて可愛い事してくれるよね」
「別に可愛さ求めてません。早く暖が取りたくて一番熱を持ってそうな物にしがみついただけです」
「うん・・・・温かい・・・」
「・・・・ホワイトクリスマスになりましたね」
「ねぇ~、なんか一曲歌いたいくらーー」
「遠慮します」
「・・・・・何で?」
「軽く拷問に感じるので」
「えっ!?俺音痴!?ジャ〇アン!?」
「・・・・・ある意味、私には」
「マジ・・・・」
別に音痴ではなく、逆に上手すぎるくらいだと思う。
単に選曲だけの問題であったのに、私の言葉足らずでは【音痴】だと告げた形になってしまったらしく。
軽く落胆する姿にどうしようか迷って結果放置。
どうせこう言っても来年になれば歌っている彼だろう。
そう判断して落ち込む姿にクスリと笑うと静かに落ちる白い雪を見つめ・・・・。
「・・・っ・・・」
不意に・・・口ずさむ。
らしくもなく某有名歌手のクリスマスソングのワンフレーズを。
英語の歌詞を静かに響かせ、驚いて息を飲んで私を見つめている彼に視線を移し口の端を上げる。
「・・・・・あなたに悪影響でしょうか?夫婦は似るって言いますし」
「・・・・狡いなぁ。・・・・しかも・・めっちゃ歌上手いのね」
「今のは・・・魔法の呪文ですよ」
「魔法?」
「・・・・・上乗せの魔法です」
そう言って置いたままだった物を振り返って示し、彼も同じように視線を走らせ捉えてグリーンアイを綺麗に揺らす。



