夫婦ですが何か?






それでもどう踏み込もうとしてもこの場は譲れないらしい彼の必死さに、結局何度目かの深い溜め息をつくと身を引いた。


まぁ、私も特別失敗したそれを食べたいわけでもないし。



「・・・・・戦争が終わりましたら速やかにキッチンを元の状態に戻してくださいね」


「ら、らじゃ、」


「少しでも散らかしたままであったら・・・・、染色しますよ?真っ赤に、そのグリーンアイに添えたら見事なクリスマスカラーですし」


「ほ、包丁もしっかり収納しておきまーす」



近くに危なげに放置されていた包丁を手にしながら、暗に血を見るぞ。と脅しをかければ。


引きつった笑みで私の手からそっとそれを抜き取り自分の後ろに隠すように置いた彼。


それを最後の牽制のように半目で念押しして見つめ、スッと背中を向けるとリビングに歩き出す。


私の興味が逸れれば安堵したように再び浮れたクリスマスソングを口ずさみながらガチャガチャと作業を再開させる音。


それに眉をしかめつつもパソコンを起動させ、彼の請け負っている仕事を在宅ワーク。


出産育児を程々に仕事には復帰するつもりでいる。


当然彼の父である社長にもそれを望まれていて、だからこそ常に現状把握と言うように遅れを取る事態にならないようにしていて。


起動するまでの間に近くに置いてあった手帳に手を伸ばして、12月のページを探し開いた瞬間に捉えた写真で思い出した。


ああ、そうだった・・・。


そうしてキッチンで一人戦に奮闘している彼に視線を走らせ少し迷い、結局後回しだと視線を手帳に戻していく。


PCのキーボードをタタタッと響かせ画面に集中する中で、時々途切れる意識に彼の歌声が入り込んで。


溜め息が出るのに徐々に聞きなれてきたそれに苦笑い。


声・・・枯れるわよ?


ダーリン。


ご機嫌な彼の歌声を耳にちらりと逆の窓に視線を走らせ、その結露した窓で外の寒さを伺った。


多分冷え込んでいる。


もしかしてホワイトクリスマスにでもなるのだろうか?と小さく意識して仕事に集中を戻していった。