夫婦ですが何か?




「ってか、・・・ハズレが大のロシアンルーレットのような危険に愛する妻を巻き込みますか?」


「全て当たりの愛情のみのルーレットさハニー」


「・・・それはもはやルーレットじゃないです。そして・・・キモイ」



『ハニー』のセリフでキメ顔らしき表情で、手をピストルの様に模して私に何かを撃ち込んできた彼にこれ以上ないくらいの嫌悪の表情と言葉。


顔に粉つけてエプロンした男が何を格好つけている。


指先に付着した小麦粉を溜息まじりに再び床に払い落とすと、『キモイ』発言にワザとらしく不貞腐れている彼に再度の疑問の確認。


「で?何を?」


「見てわかるでしょ?」


「・・・キッチンを散らかしている様にしか」


「嫌味かよ」


「なら・・・・・材料を無駄に。・・・もうすでに一度目のそれは焼きあがっているであろうに」


「っ・・・」


疑問を向けれは不愉快継続の様に強気で返した彼に、同じ様に腕を組んで対峙して、更に嫌味っぽく彼が隠し忘れた物へと視線を走らす。


寝起きの嗅覚に入りこんで、胸焼けを起こしそうなくらいバターの強烈さを示す。


アップルパイだ。


多分。


きっと、バターの分量と焼き時間か温度を間違えた。


匂いと遠目に捉えた物とで大体を理解して彼に視線を戻せば。


今更それを隠す様にジリっと動いて苦笑い。


それでも気まずいのか視線は絡まず、多分頭では何を切り返すか思案中だろう。


そんな彼に溜息を吐いてキッチンの奥に踏み込もうとすれば、それは俊敏に私を阻んで無理矢理な笑みを浮かべる男。


「な、何をするのかな?」


「出来上がったアップルパイの今後の向上と対策の為の試食ですが?」


「いやいやいや、・・・アレは、何て言うか・・・失敗したから」


「すみません。私の乏しい視力でも明らかなる失敗は理解しております」



だからご心配なく。


そんな勢いで振り切ろうと動くのに、かなり本気で阻止したい彼の力の強い事。


結局キッチンの外まで引きつった様な笑みで押し返されると。


「男の戦場に足を踏み入れてはいけません」


「それを言うなら私のテリトリーで勝手に1人戦始めて荒らしたのはあなたでしょう」



アップルパイと名前ばかりは幸せな爆弾を作って。


その処理係は私だっていうのに。


とは、さすがに本気でヘコむだろうから言わないですけど。



「あなたが失敗するのなんて、水戸◯門がラスト15分で必ず印籠出すくらい安定した決まり事なんですから」


「うっそ、俺めっちゃ向上無しって事!?それって毎回失敗でしょ!?ってか引用が渋い!渋いよ千麻ちゃん!!」


「もう観念して私に頼ったらどうです?・・・悪い様にはしないから」


「そのセリフがすでに悪役の様なんだけど・・・」


なんて拉致のあかない押し問答。