どうやら彼の解釈では私の待ったは【恐怖】によるそれだと取られていたらしく。
かなり不本意であろうと受け入れて、尚且つ私を労わるような事まで言ってくる。
そんな姿に複雑な苦笑いしか返せず、心の中では心底謝罪を繰り返す。
いつか・・・、いつか次の機会にはこの埋め合わせはしますから。・・と。
それでもやはり不貞腐れた表情維持の彼。
そんな姿をじっと見つめそして答えは明確な質問を口にした。
「・・・・・嫌いになりますか?」
『ならないでしょう?』
そんな含みを込めて問いかけたのは、目的は問う事でなく仲直りの要求なのだ。
だって彼はその言葉に必ず・・・・。
「悪いけど・・・・・、大っ好き・・・」
表情ばかりは不満げに怒りを示すのに、言っている言葉の意味は愛情一色。
その言葉にフッと口の端をあげて見せれば、彼もつられて表情を崩し困ったように笑った。
「千麻ちゃんは狡い・・・・焦らされるほど好きになっちゃうよ」
「じゃあ、一生焦らせば一生好きでいてくれるんですか?」
「さらっと恐い事言わないで。今更プラトニックとか俺無理だから!!」
「私もあなたとのセックスは好きで必要ですが?」
「・・・っ・・・フォーリンラブ」
「馬鹿ですね」
さらりと素直な心情を口にすれば何故か感極まった彼の腑抜けた笑顔。
さっきの不機嫌なんてどこへやら。
すっかりご機嫌に私を見つめる彼は尻尾を振っている犬に見えて仕方がない。
可愛いなぁ、おい・・・。
なんて単純な。とも思うのに、その単純さに私は助けられている気もして。
いつもなら情のないような態度で切り返すこの場面、スッと手を伸ばし彼の首の裏に指先を走らせると肩に彼の頭を引き寄せた。
「・・・千麻ちゃん?」
トンと軽い接触。
同時に疑問の響きが名前を呼んで。
何となく愛おしくなって彼の頭に自分の頭を預けるように密着した。
「・・・・・・リハビリ・・頑張りましょうね」
ただ一言、
そう告げれば彼が柔らかく笑ったのを感じる。
その言葉の裏を瞬時に理解して。
細工のきいた魔法なんてなくても、当たり前の方に触れ合える関係に戻りたい。
全ては・・・・・彼が『好き』だからだ。
それをしっかりと言葉から読み取った彼が静かにフードに触れてそれを外した。
そのまま再びゆっくり私の肩に頭を預けた彼。
フードの隔たりがなくなった。
それでも一瞬だって心は騒がず穏やかだ。