ふわりと風が吹く。
その風に引かれて笹がざわめく庭に視線を移し相変わらず綺麗だと思った。
葉っぱに付着した水滴が日光を反射してキラキラと光って、耳には風鈴がやさしく響く。
ゆっくり目蓋を閉じそして同じ様に開いて息を吸うと、心の奥から浄化される気がした。
なんて癒やされるんだろう。
前よりもずっと・・・。
「幸せそうですね」
無意識に近く自然とその言葉を口にした。
言って、自分が口にしたのかと馬鹿みたいに彼を振り返って見降ろせば、すでにその顔に頬笑み携え見上げる姿。
不覚にもその穏やかな笑みに心臓が強く跳ね、自分には都合の悪いタイミングに手首に絡みついてきた熱。
余計に強く心臓が作用して、次の瞬間には少し強引な力で引き寄せられトンと彼の隣に腰を下ろした。
「・・・・座って。って、何度か声かけたでしょ?」
「・・っ・・・立ってたかったので、」
「俺は同じ目線で千麻ちゃんのコスプレ見たかった」
今度は悪戯っ子の様にニッと笑った雛華さんに非難するように目を細めたけれど私の負け。
顔が熱い。
多分・・・・赤い。
それは確実に目の前の彼も理解してて、それでもその部分に指摘はしない。
何も変化のないように扱ってくれるのは私が困るのを知ってるから。
そうやって、その優しさに触れる時間が好きだったんだ。
「・・・・幸せですよ」
「えっ?」
「ん?いや、千麻ちゃんが今【幸せそう】って言ったから」
そうだ、私が思わず口にしていたんだった。
思いだして『ああ』と納得すると、困ったように小さく噴き出した雛華さんがゆっくりとそのグリーンアイを庭に向けた。
柔らかく愛おしむ様な眼差し。
それこそ、芹さんを見る時と同じ様な。
「・・・・さっき、・・・呆れたでしょ?」
「・・・はい?」
「ほら、・・・俺と芹ちゃんがべったりとくっついてた時?」
「ああ・・・、まぁ、軽く・・・」
「ははっ、本当に正直だよね千麻ちゃんって」
『そんな事はない』と口にするのが常識?
でも、私はそんな風に思った事を誤魔化したりしない。
勿論仕事の上での場面ではいくつも嘘の反応を積み重ねよう。
必要であるなら。
でも今はプライベートな時間で、相手も心許すべき存在。
クライアントや契約する取引先なんかじゃない。



