夫婦ですが何か?





不本意な笑いを取ったところで今まで雛華さんの腕に収まっていた芹さんが思いだしたようにその手からスルリと抜けると、ゆっくり立ち上がって部屋の奥に歩き出す。



「芹ちゃん?どこ行くの?」


「お茶も出してなかったと思って。あ、雛華さんはそこでおもてなしお願いします」



ピッと指さし動こうとした雛華さんをその場に縫い付ければ、了解とばかりに敬礼してにっこりと笑う彼。


ああ、もう息が出来ている。


もう突き崩せない様な2人の息が。


コレが・・・・・幸せなんだろうな。


不意にそんな事を感じどこか温かく感じる2人の雰囲気に呑まれていれば、フッと動きだした隣の影。


えっ?と反応した時には靴を脱いで彼女の姿を追い家に上がった。



「手伝うよ」


「茜さん、いいんですか?雛華さんと話してても・・」


「いや、もう何も秘密はないってくらいひーたんとは過ごしてきてるから」



そう言って雛華さんを振り返りニッと笑うと、向けられた雛華さんもクスクス笑って頷いて見せる。



「いいよ。茜ちゃんに手伝ってもらいなよ芹ちゃん」



ふわりと微笑み彼との接触を抵抗も無く促す姿。


もうその姿に不安はない。


あるのは信頼と愛情。


それを理解したように芹さんも微笑むと隣に立つ彼を見上げて微笑んだ。



「よろしくお願いします」


「ふふっ、芹ちゃんの為ならなんなりと」



ああ、


嬉しそうな顔しちゃって・・・。


ねぇ、『芹ちゃんが好き』って感情ただ漏れよダーリン。


そんな感情を隠すことなく現した彼がコレはやりすぎだろ。と言いたくなる感じに芹さんの腰に手を添える。


内心呆れてその姿を見送っていると、気のせいかチラリと私を振り返った気がする。


いや、雛華さんをだったのだろうか?


結局分からないまま芹さんと奥に消えてしまったと同時に一緒にそれを見送っていた雛華さんに言葉を向けた。



「すみません。キチガイな夫が奥様にセクハラしてました」


「あはは、『セクハラ』って・・・。それにまだ『奥様』ではないけどね」



そう言って飾り気のない左手を示し未婚を意味する。


ああ、でも飾り気はあったか。


それも左手の薬指の爪先に。


こうして結ばれた今も・・・、いや、結ばれたからこそ?


今もその誓いは健在で、永遠を誓う指先は紫に染まっているのですね。


紫・・・・彼女の色に。


それは・・・こんな私の指にハマっている形ばかりの指輪よりよっぽど貴重で高価で永遠な気がしますよ。


そして気がつく彼の右手の指輪の有無。


きっと・・・・彼女の左手にその黒い石は存在しているんでしょうね。