「逃がすもんか」
「逃がすもんか」
見事な二重奏の牽制。
思わず2人で噴き出して、彼女の腕をグイッと引き寄せると抱きしめる。
引かれるまま飛び込むようにその身を寄せた彼女も瞬時に俺に腕を巻きつけて、しばらくお互いのぬくもりや存在を確かめるように不動になって。
まだ小さく再度の夫婦生活に不安はあるのに今は幸せで。
ああ、でも・・・・そうか、
また・・・・夫婦になるんだ・・・・。
「千麻ちゃん・・・・、」
「はい、」
「・・・・・・・不安はない?」
「・・・不安・・とは?」
「【夫婦】に戻る事に・・・・不安はない?」
勿論、ここに来て結婚に怖気づいたとかじゃなく、一応聞いておきたかったんだ。
彼女の意思や本心を。
聞いて、対処できる不安はなるべく取り除けたらって。
でも・・・・さすがさすが、
「『ない』と、言ったら嘘になります」
「うん、」
「でも・・・、それはどんな時でも、やり直しでも新たな挑戦でも必ずついて回る不安で・・・・、だから、挑む価値があるのでは?」
「・・・・」
「私達はそんな不安を一緒に悩んで挑んで、良い結果に導いていく為に一緒にいたんですよ。
先にどんな達成感があるのか・・・、
あなたは最高の達成感を与えてくれる人であったと記憶しているのですが?」
言いながら少し体を離した彼女が俺の両頬を包みこんでじっと見つめる。
あなたなら出来るでしょう?
そんな視線に怯むどころか心がざわめいて。
そうだ、彼女のこんな期待の視線に挑んで応えて、その結果に歓喜されるのを俺は成長の糧にしていたっけ。
一蓮托生。
公私共に・・・・絶対のパートナーだ。
「いいの?俺にまた期待して・・・」
「大丈夫です。もうこれ以上ないってくらいあなたには失望してからの関係修復ですから」
「うわぁ、俺なんかダメ男~」
「あなたが人として人格破綻してるのは秘書として傍にいた時から存じてます」
「『人格破綻』って・・・これから夫になる相手に酷くない?」
「この子には良い反面教師ですね」
「千麻ちゃん・・・・・子供にも父親の悪印象植えつけちゃう?」
どこまで俺って彼女の中で印象最悪なんだ?とがっくり項垂れて細身の肩に頭を預けると。
クスクス笑った彼女がその頭に頭を預けて優しく撫でてくる。



