あの・・・彼女から初めてキスしてくれた時だ。
口の端にだったけど。
その記憶の回想をしてしまえばこれも必然。
スッと顔を近づけ唇でなくその端に唇を当て、しっかり密着させてからゆっくり離してクスリと笑う。
「我儘で自己中でどMな男だけど・・・・もらってくれるの?」
「そう聞かれると・・・・取り下げたくなりますね」
「でも・・・この指輪は返さないよ?綺麗な青い石だね」
「・・・・・まぁ、私の名前をもじって・・・【水城】なので青に、」
「あはは、千麻ちゃん色に俺を染めたいわけだぁ」
俺に負けず劣らずな独占欲じゃないか。とケラケラ笑って見せ、少しでも彼女の余裕の優位を崩してやろうかと思った。
なのに・・・。
女王さまは負けず嫌いで一枚上手だ。
「それは・・・、リハビリと称して1年間私への奉仕と2年分の愛情への報償?きっと・・・あなたの努力や実績はこんなものじゃ足りないくらいですけど」
狡いね。
どこかで似たようなセリフを俺が言った気もするよ?
確か、そう・・・、千麻ちゃんの左手のクスリ指に独占欲の緑を色づけた日に。
ニッと勝ち誇ったように笑う彼女に完敗だ。
負けている方がどこか心地いい時間にも感じるし。
千麻ちゃんの愛情を強く感じるのも負けている時なんだから。
彼女の想いを確認するように新たな指輪に視線を落とす。
光を反射してキラキラと光る青い石にこの2年近くの努力が報われて癒された気がして。
やっと・・・彼女に許された気がして心が軽くなる。
「・・・・コレ、俺のと重ねづけ出来るようにしたの?」
「あなたが最初の指輪を頼んだ店で注文しました。あなたのはシンプルなシルバーだったので石が入っても鬱陶しくはならないでしょう?」
「じゃあ、千麻ちゃんはもしかして・・・ただのシルバーリング?」
「私の指には他の色が戻る予定だったので」
そう言って手に持っていた小袋を目の前で揺らす意図は、その中に彼女の分の指輪が2つ入っていると言いたいらしい。
その袋の揺れを止めるように手のひらに握って、優しく彼女の手から奪うように引っ張ると案外するりと離されたそれ。
小さく口の端をあげて抱えている膝に頭を預けながら俺を見つめる彼女。
それをチラリと確認して袋の中身を自分の掌に転がして出す。
コロンと2つの金属触。
いつか俺が彼女を縛った緑の石がはめ込まれたマリッジリングと、まだ新しく輝き強いデザインあるシルバーリング。
きっと重ねづけ出来るようにデザインしたものなんだろう。



