ゆっくり歩きだす姿を見送って、いったい何をするのだろうと疑問で沈黙。
寝室にあるちょっとした引き出し付の棚。
その前に立った彼女が迷わず引き出しを静かに開けると、中から何かを取り出して見つめる。
その何かは酷く小さい物らしく、掌の中に納まる袋から彼女が更に中身を取り出すとようやくこちらに体を向けて戻ってきた。
ベッドが彼女の体重で小さく揺れて、両手をつきながら俺の前に舞い戻った彼女がしっかり座り直すとジッと見つめる。
どこかその眼差しに緊張して息を飲むと、それを合図に彼女の声が静寂だった空間に響きだした。
「まず、名前の件は過去の約束もありますので私に反論の余地はありません」
「はっ?・・・あ、【みずき】?うん、譲る気ないけどOKなんだ?」
「漢字は追々考えましょう」
「はい、」
何だかよく分からないけれど、彼女の中でも子供の名前は【みずき】で良いと結論が出たらしい。
こんな形であっさりと名前の響きだけ決定した現状にいまいち彼女の意図が分からない。
名前は認める?
でもさっきばっさり俺を切ったし、まさか水城【みずき】で行く気なのかなぁ?なんて小さく懸念していれば。
「すみません」
「えっ?はい?」
「一つとても重要な確認事項があるのでそれを確かめてもいいでしょうか?」
「はっ?重要?」
終始無表情。
全くその思考読めない彼女の突飛な行動言動にさっきから見事疑問符ばかりが頭を占めて。
そんな俺をお構いなしに、彼女の指先が俺の左手を滑って絡み付き、ゆっくり持ち上げ指輪に触れた。
彼女との最初の結婚時のマリッジリング。
彼女に渡したリングとは違い俺のは至ってシンプルなシルバーリングで、それを確かめるように見つめていた彼女。
今更何をそんなに疑問に思っているのかとこちらも疑問に方眉上げれば。
「私、あなたの物にはなる気さらさらありません」
「・・・・・・」
絶句か絶叫か・・・真剣に迷って結果絶句。
夜だし。
それでもその裏にある感情は全く同じもので、完璧に打ちのめされた一言に不動になる。
さらさらない。って・・・。
あれ?
俺振られてるのか?



