「ダメ、弱ってる猫を手懐けるチャンスだもん。俺が食べさせる」
「・・・何でもいいです」
「うっわぁ、言い返せないほど?千麻ちゃぁん、千麻ちゃぁん、元気お出し〜。
ほ〜ら、冷たく甘くて爽やかなチョコミントアイスで・・・」
「・・・気のせいですか?私の乏しい視力の目にも1/3くらい液体化し始めて見えるのは」
意気揚々と買ってきたアイスの蓋をあければ・・・。
原因を一からあげれば、まずはドライアイスを頼み忘れ、二に車の移動時間、三に今までのやり取り間の俺の手の熱。
結果やんわりと固形をキープしているものの、その周りに素材を同じとする液体も出来ている。
指摘され苦笑いで彼女を見つめ直すと心底呆れた様な眼差しでの非難。
「・・・まさかアイス一つであなたの無能ぶりを確認しようとは、」
「うっそ、うわーんっ、ごめん!!」
「・・・使えな。買い出し一つまともにこなせない人に間違っても人生とか預けたくないんですが、」
「ううっ、不器用でも甘さと愛はたっぷりだよ?アイスも溶ける程に熱く」
立場なくも、なんとか固形を保っている部分をスプーンで掬って口元に運んで見る。
しばらくは異様な物でも見るかの様に眉を顰めていた彼女も、最終的には『やれやれ』と、いった調子で口を開いた。
指先に伝わる彼女がスプーンを舐めとる感覚に小さくときめいて、騒ぐ胸の内を抑えながら2口目を掬い取る。
「・・・美味しい?」
「・・・しっかり冷えて舌の上で溶ける感じなら完璧でした」
「と、溶かす手間省けたじゃぁん。味には変わりないでしょ〜」
「・・・じゃあ、それもう2時間は放置して、ドロドロのぬるくなった液体でもあなたは味は変わらず『美味しい』と言って飲みほせるんですね?」
「・・・ごめんなさい」
「いえ、お気になさらず。いい教訓になりました」
「教訓?」
「任せられないと。・・・色々と・・ね」
「っ・・・」
見事打ちのめされて不動になれば、のっそりと起き上がった彼女が俺の手からアイスを抜き取り自ら口に運び始める。
その仕草で更に言葉の重みを噛み締め溜め息混じりに床に座った。
「・・・頑張る方向見失ってませんか?」
「と、言うと?」
「人間、得手不得手があるもので、この努力はあなたには不得手な物でしょう?」
「・・・俺の手伝いは無意味?」
「と、言うより。・・・・はぁ、うっかり見られた自分に後悔です」
「そこ落ち込むぅ!?いや、むしろあの瞬間の俺、ナイス無断訪問だったし!それに現状千麻ちゃんこんなじゃん!!」
俺に弱味でも握られたとでも言いたいのかこの女。



