夫婦ですが何か?



まぁ、致仕方ない事か。と、眉尻下げつつ買ってきた物をテーブルに置き、袋から一つだけ『これなら』と取り出してソファーに蹲る姿に近づいた。


覗き込めばしっかりと目蓋を閉じている姿。


化粧なんて一切してないのに伏せればその長さが強調される睫毛に思わず見惚れる。


自分より5歳も上な筈なのに肌も姿も一切そんな風に感じない。


1年前は他の髪同様長く伸ばしていた前髪も今は眉毛よりやや下に切りそろえられて、俺のマンションにいた時につけていたウィッグのそれに近い気がする。


そんな姿をソファーの前でしゃがみ込んで頬杖つき、『可愛いなぁ』とドキリと反応しながら見つめてしまえば。



「・・・・視線がウザいです」


「あっ、起きてた?」


「3秒で睡眠に落ちれるほどの〇太君ではありません」


「じゃあ・・・・買ってきたコレ食べる?」



そう言って袋から取り出していた物を彼女の視力補える距離に示して見せれば、マスクの上の大きな目がいつもの半分ほどの開き具合でそれを見つめ。



「・・・・・・食べます」



そう言って白く細い指先でマスクを顎の下までずらして見せた。


あっ、やっと千麻ちゃんの顔見れた。


そんな満足感に満ちて口の端を上げると、怪訝に方眉上げた彼女が鋭く反応して非難の視線。



「・・・年増のすっぴん見てときめいたりしないでくださいね」


「千麻ちゃんは見た目もお肌もピッチピ・・・チでは無いけど、実年齢よりは確実に若い!」


「・・・まぁ、褒め言葉として貰っておきます」



言われた言葉を頭の中で整理したらしい彼女が、過剰表現ではないけれど褒められたのだと括って意識を俺の手の中身に移していった。


いつも以上に頼りなく何処か力のなさそうな指先を伸ばし、それこそ気怠そうにソファーからその身を動かしていたけれど、


・・・ピタリ。


ほんの少しその指先動かせば触れる距離での不動に疑問の眼差しで見つめれば。



「・・・私にコレを食べさせたいでしょう?」


「うわぁ、命令形なおねだり?ってか、起きて食べるのも億劫な程怠い?」


「・・・もう、いいです」



まさかの女王様なお願いぶりにいちいち反論を返してはいけないらしい。


遅い!と、言いたげに俺の手から目的の物を抜き取ろうとした手を素早くかわすとニッコリ微笑み不機嫌な顔を覗きこんだ。