まぁ・・・、当然か。
そう簡単に気持ちを割り切れたら人生苦労はしない筈。
納得していれば不意に風の様に入り込んできた声。
柔らかく眠気孕む愛らしい声音。
「ん・・・・茜・・・・さん?」
ようやく眠りから覚めた芹さんがその目を擦り、目の前の光景が現実であるのか確かめるように私達を見上げた。
その頬に髪の毛が無造作に張り付いているのに、雛華さんがクスリと笑うと手を伸ばし頬に触れる。
瞬間、
言い様のない焦燥感。
でもコレは・・・・どっち?
自分の僅かばかりの嫉妬なのか・・・、それとも隣に立つ彼の心情を気遣って?
「髪の毛ついてるよ芹ちゃん・・・」
「あ、すみません。と、言うか・・・私も寝ちゃってました」
「うん、俺のせいで動けなかったよね?ごめんね」
あっ・・・・。
うん、
幸せいっぱいなのですよね。
でもこっちは何とも言えない動悸で満ちますよ雛華さん。
そして今感じる焦燥感は嫉妬と言うよりはさっきの後者のそれ。
まるで私たちなどいないかのように雛華さんが彼女を愛おしむように触れて言葉を落とし、恥らいも無く当たり前の様に彼女の額に唇を寄せる。
そう当たり前。
そう感じさせるその行為は2人には当たり前なのだろう。
そう感じさせるだけ幸せを目の当たりにさせられている。
だからこそ、それを手放した彼の心中に複雑に動揺し焦燥感が働くんだ。
「ねぇ、どんだけ幸せか知らないけどさぁ。目の前で子作りだけは始めないでね」
「大丈夫。茜ちゃんみたいに非常識じゃないから」
「人の婚約者誘拐した非常識な奴に非常識とか言われたくねぇよ」
チラリと視線を隣に走らせたと同時に、呆れた様な声を響かせた彼。
その表情は嫌味な笑みで雛華さんを見降ろし、見降ろされた雛華さんは動じるどころか芹さんを引き寄せぬいぐるみの様に抱きしめると彼を見上げる。
そして取り残されたようにポツンと客観的にその光景を見つめる私は、やはりこの3人の輪には入れないはみ出し物なのだと痛感。
まぁ、嘆くほどでもない。
そんな事を思った瞬間に絡むグリーンアイ。
彼の?
いや、雛華さんの。
私を捉えたその顔がフッと柔らかく微笑むと縁側の板間をトントンと叩いて示し声を響かせた。



