頭に記憶したメモの内容物を買い込んで車の助手席に積み、あとはそれを注文者のところに配達するのみだと先を急ぐ。
すでに通いなれた彼女の今の住まい。
それなりに貯蓄豊富な彼女は女の一人住まいにしては立派なマンションの一室に住んでいる。
まぁ、物騒な世の中だし、彼女がそうしなかったら意地でも俺が囲っていたけど。
半ば強引に奪った合鍵と電子ロックの番号を使用して厳重な防犯設備のエントランスに満足して歩きぬけた。
買い忘れは無いかと再度袋の中身を確認して、1階に留まっていたエレベーターに乗り込むと押しなれた数字を無意識にも近い形で点灯させる。
そして浮上する感覚に身を任せて壁に寄りかかり、表示の変わるデジタル表記の数字を見つめた。
さて・・・、ご機嫌はいかがなものかと苦笑いを浮かべ、すぐに浮かぶ気怠そうな猫の寝起きの様な彼女の姿。
あっ、やべ・・・、欲情しそう。
もう自分もだいぶ末期だな。と、彼女に馬鹿正直に堕ち込んでいる自分に呆れもするのに幸せにも感じて。
どんなに邪険にされようがつれなくされようが、すべてが彼女の魅力で愛らしい一面だと思えてしまうほど。
そう告げればきっと彼女は俺を『どM』だと詰って呆れた表情を見せるんだ。
最近はそう言われても痛くも痒くもない自分は確かにMな方なのかもしれないと思うほど。
でも、それは千麻ちゃん限定なんだけどね。
開いた扉から鼻歌交じりにその身を出して、割と新しく綺麗なマンションのローカを抜ける。
そして通いなれた部屋番の扉の前に立つと、表札の【水城】の表示に苦笑い。
まぁ、絶対にまた【大道寺】に変えてやるけど。
挑むように表札の文字を見つめると、チャイムを鳴らすでもなく開錠して扉を躊躇いもなく開き風と共に中に入り込んだ。
「千麻ちゃーん、ご機嫌いかが~?」
言いながら袋を抱えてリビングに入り込むと、予想通りソファーで毛布に包まっていた彼女がモゾリと動きを見せて半身を起こす。
横になっていたために変に乱れた長い髪と、癖のついた前髪が一部分上がって眉が見える。
その眉をしかめ、目を細めてこちらを確認した彼女はコンタクトをしていないと予測する。
口元にはマスクを装着して暖を取って蹲る彼女は酷く切なそうに目蓋を下し、再びソファーにその身を沈めた。
直後、
「ダメだ・・・、あなたの顔見たら気持ち悪くなりました」
「酷っ!!俺のせい!?」
「存在が暑苦しくて胃にもたれそうで・・・」
「ああ、千麻ちゃんに愛情たっぷりの俺は激甘スイーツな男だから」
「・・・・・溶けて消えてしまえ」
「・・・・千麻ちゃん、」
皮肉屋で意地悪なのは毎度の事。
それが彼女の普通で俺たちの挨拶みたいなものなんだけども・・・、
ちょっと棘が強い今はご機嫌麗しくないと理解。



