「気持ち悪っ・・・」
「おいっ・・・」
「だって明らかに千麻ちゃん想像してにやけてたんでしょ?千麻ちゃんがそれ知ったらこんな反応取るかなって・・・」
「ああ、さすが副社長。でも彼女ならもっと相手が傷つく様に少し間をあけ、キチガイな者を見るかのような眼差しで嫌悪を込めてその言葉を言うでしょうね」
「なぁ、本当にさ、お前ら真面目に消えて。俺と千麻ちゃんの関係に口出してくんなよ!!」
言いながら意味がないと分かっていながらボタンを連打してエレベーターの到着を急かす。
このままここにいたら嫌味な攻撃に心から負けてしまいそうだと危険予測。
そうしていやにゆっくり上昇する数字を見上げながら、再度時計を確認してまた数字を見上げた。
そんなタイミングにじっと観察していたらしい雛華が首を傾げて俺に確認するような声を響かせてくる。
「本当さ、何か急いでるの?そこそこ仕事には真面目な茜ちゃんがこうして慌てて退社しようとしてるくらい」
「ん?まぁ、慌てる用事でもないんだけど・・・しいて言えば俺が焦ってるだけ・・・」
「何それ?意味わからない」
「いいよ、分からなくて」
俺だって、理解したばかりなんだし。
心の中でそう補足して車のカギを探し始める。
至る所に触れて結局は上着のポケットに入れていたと思い出し手を突っ込むと、タイミングよく響くエレベーターの到着音。
それに顔をあげて開く前から扉に向かって歩き出し、ポケットからその手を抜くと開きかけの扉の隙間から体を斜めに滑り込ませて身を投じた。
「茜ちゃん、何か落ちたよ!」
その声に閉ボタンを押しかけていた手を止め雛華に視線を走らせると、俺が落としたらしいメモをひらひらと揺らして示してくるのにニッと口の端をあげて見せる。
「いい、いらない」
書いてあることは覚えていると頭を指先で小突いて見せ、そして今度こそ分厚い扉をしっかりと閉じて独特の浮遊感に身を預けた。
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「・・・・何を拾ったんですか?」
「ん~・・・メモ?多分・・・買い出し?」
「・・・・・まさか、千麻に買い出し頼まれてて急いでいたんじゃないですよね?」
茜が落としていったメモを残された2人で見つめ苦笑い。
本当に仲がいいんだか悪いんだかのあの2人は、あれでいて最高のパートナーなんだから。
まぁ、こんな風に嫌味を言えるのもどうせあと少しでしょ?
千麻ちゃんの心一つで変わるこの状況に、やはり影の実力者は彼女であると思って小さく笑った。
「しっかし・・・・このメモの買い出しって・・・」
多分電話か何かで言われ急いで走り書きしたようなメモを見つめ小さく笑ってそれをポケットにしまった。



