「そう簡単にこの9か月の私の【あなたアレルギー】が改善するとでも?」


『えっ、ちょっ・・・えっ、えっ・・?嘘・・・俺、しばらくこのままぁ!?』


「あなたの拙くて子狡い魔法もどきで?心は許したかもしれませんが・・・人間そう単純に出来てないのですよ?」


『ま、待って・・・、じゃあ、エッチとか・・・駄目?』


「・・・・・せいぜい私のリハビリに励んで触れる日が来るといいですね」


『っーーーー無理無理無理ぃ!!』


「良かったじゃないですか?私たちの関係をやり直したいんでしょ?こんな始まりだったじゃないですか」


『こんな超【ふりだし】からじゃなくてっ、ってか、【ふりだし】より下がってない!?』


「3歩進んで4歩下がるのが私達でしたから」


『ねっ、ちょっ・・千麻ちゃぁん!!』


「ダーリン・・・」


『っ・・・』


「フフッ・・・・頑張って、」


『っ・・・千麻ちゃんのアホぉぉぉ!!!』



彼の嘆く声をくすくすと笑うと長電話だった通話を断ち切った。


その瞬間に酷く慌てて携帯を確認し、すぐに不満げに私を見上げる彼ににっこり微笑んで軽く手を振ってみせる。


だって、


あなたを虐めて焦らすのが大好きなんですよ私。


でも・・・、


ああ、言い忘れ。


そう思って彼の番号をリダイヤルして耳に当てると、たいした間もなく不愉快な声の応答。



『・・・はい、』



思わず噴き出してしまう。


そう、これ、


この反応よ。


この反応に満足してから彼を持ち上げる。


それが私でしょ?




「そのサングラスは似合わないです。速やかに雛華さんにお返しください」




そう告げれば少しの間の後に意味を理解した彼が小さく笑って、




『だから・・・・いつだってその間が狡い・・・・』




言いながら、視界に捉えている彼がサングラスを外した。


遠くても記憶に鮮明なグリーンアイが私を捉えてにっこり微笑んだのを感じながら綻びだらけの絆を抱きしめ通話を切った。








何回でも出直して。



出直して、出直して・・・、



何度も私の予想を超える奇跡を見せて。





今度こそ完全な夫婦になる為に。






でも、



そんな日は来るのかしら?