あの時は・・・その選択が嬉しかった。


でも・・・、



『今の俺はね、千麻ちゃん力がないと何にもできないただの男で、

でも、ただの男として千麻ちゃんと不完全でも綻んでてもやり直したい時間があって・・・、ってか、』



あっ・・・・、


叫ぶつもりでしょ?


そう理解して笑って・・・、


案の定、機械越しとリアル声の二重奏。





『千麻ちゃーん!!

その子の為にも、

俺と千麻ちゃんは夫婦であるべきだと思うんだぁ!!


俺ともう一回、結婚してぇ!!』





響いた声が小さく反響するのを感じて、思わず携帯の時刻を確認して方眉を下げた。


なんて・・・深夜の迷惑行為。


馬鹿・・・。






本当に馬鹿ね。



あなたのパパは馬鹿なのよ永遠(とわ)。



でも・・・私達だけには最高の魔法使い。






『完璧な魔法だわ・・・・・ダーリン』









胸の人形をギュッと抱きしめ彼を見下ろす。


きっと表情はそこまで明確でないとわかっているから口元に弧を描いて。


見下ろす彼は自信満々に演技がかって両手を私に伸ばして・・・ああ、ここからでもあなたが笑ってるのはわかる。


本当にドリーマーで馬鹿。


そんな彼にゆっくり身を乗り出すとクスリと笑い声を落とした。


彼のように近所迷惑にも・・・・大きめの。








「っーー出直しーーーーー!!!!」








携帯からも地声も彼の耳に届いたと思う。


叫んで身を戻すと髪を抑えて一息ついた。


そして口の端をあげて笑った瞬間に機械越しの彼の声。



『っーーーーきついぜハニー。・・・でも、言われると思った』



その言葉に噴出して笑って彼を見下ろせば、たぶん苦笑いの彼が片手をあげてこちらに手を振っているのを捉える。


それに『フフッ』と笑って更なる補足。



「そういうセリフは私の前でその装いをやめられたときにお願いします」


『・・・・・・はっ?』



付け足した言葉はどうやら予想外だったのか、一瞬の間の後に間の抜けた声を響かせた彼に淡々とした切り替えし。