『まず、』
「はい、」
『その家に千麻ちゃんが住んでるのも俺の指示』
「はい?」
『あの時の千麻ちゃんを考えれば俺の手が及ぶような場所には長居しないし休まらなかったでしょ?だから苦渋の策として彼を買収したの』
「・・・・買収・・・したんですか?されたんですか?」
『で、仕事に関しては大塚にお願いして千麻ちゃんと彼をトレードしたような形になってた。彼が抜けた分の仕事はあの家で千麻ちゃんにさせて、彼はこっちで俺とひーたんのサポート』
ああ、通りであの仕事量。
ここまで聞けば疑問だった仕事量も解明されて、私がしていたのは本当に一日でこなす仕事量だったのだと納得した。
つまり私は知らず知らずに会社勤務をしていたという事になる。
『で、千麻ちゃんが働いた分の給金を彼に渡して、更に契約金も上乗せ』
「・・・・契約?」
『千麻ちゃんに手を出すな。って、・・・あんまり守られてなかったみたいだけど』
そう言って舌打ちした音が耳に入り込んで更に納得。
だから恭司は私に手を出してこなかったんだ。
そして彼の手から離れたと思って生活していたこの時間もずっと、結果彼の手の内で、目の届く箱庭のようなところで生きていたのだと理解して脱力。
そんな心情を読み取ったかのように小さな笑い声の後の彼の声。
『俺が千麻ちゃんを手放す筈ないでしょ?
休息を与えたって、絶対に本気で離したりはしない』
それは・・・・本当に犯罪よ?
そう思って、この人には敵わないと思い力なく笑った。
でも、一つだけ・・・。
「・・・・・・・・・・何で、・・・副社長の座から降りたんですか?」
そう、
彼であるならその場に留まり、その隣に私をまた引き戻すのかと思ったのに。
それが疑問であると声に乗せるとあっさり答えは耳に響く。
『千麻ちゃんを選んだから』
「・・・・」
『いつか・・・副社長か千麻ちゃんかで即決できなかったでしょ?
でも、今は出来る・・・・』
ええ、忘れてませんとも。
すぐに思い出せる引き出し。
あの時、自分より仕事の面での自分を評価されて歓喜した自分を覚えてる。



