「気違いな甥っ子さんの趣味でコスプレ強要されました。DVで訴えていいですか?」
「千麻ちゃん!?なんかそれ俺の印象悪い!それに旦那さまを目で癒やさせるのも妻の役目でしょ!?」
「そんな項目この契約にはなかったかと、それにそんな視覚プレイに興奮なさるならやはり風俗的な・・・」
「ねぇ、一回・・・、真面目にこの契約の条件書きだしてみようか?絶対、夫婦としての概念がずれてると思う」
「ふっ・・・ははは・・・・」
気がつけば夫婦漫才を繰り広げた私達の会話に、観客である【彼】の笑い声が響いて視線を移した。
口元を手で覆い『ごめん』と言いたげに片手が上がる。
相変わらず子供の様に屈託のない笑顔をする人だと思い胸が疼く。
そして何とか笑いを収める事に成功したらしい【彼】が私と彼を順に見て頬笑み息を吐いた。
「あ~・・・・、なんか、安心した・・・」
「安心?」
「うん・・・、なんか、仲良いし。上手くいってるんだなぁ。って」
あっ、
少し・・・・・痛い。
安堵の表情で弾かれた言葉に胸の奥が締め付けられた。
そしてその言葉を向けるのはあなた達自身にですよ雛華さん。
ここに来て、あなた達の穏やかな姿を見て私が・・・私と彼が思ったのはまさにそれ。
想像以上に穏やかで落ちついた幸せを見せつけられてしまった。
あなたが築き上げたこの空間で。
そして前よりその完璧さを増したように感じるこの空間は、そこで幸せに浸り穏やかに眠る彼女のおかげなのでしょう。
なんて・・・羨ましい人。
彼の元婚約者【彼女】・・・・・・芹(せり)さん。
彼の同い年の叔父の【彼】・・・・・・雛華(ひなか)さん。
それこそ【運命】的に出会って結ばれた2人は幸せの勝ち組なのだろう。
眠っているその顔だけで分かる。
彼女は幸せなのだと。
不意に気になり隣の彼を見上げれば、その視線も意識も静かに寝息を立てる芹さんに注がれて。
許されるのであれば近くにより、愛おしむようにその姿に触れたいのだろう。
その横顔で、眼差しで分かる。
私への偽りのそれとはまったく違う。
本物・・・・。
本物の愛情の眼差しを彼女に向けている。
そして気づいてしまう。
まだ、手を伸ばしてしまいそうなほど彼女を愛しているんだと。



