慌てて取りに戻ってそれを拾い上げ、再びベランダに戻ると彼を見下ろす。
遠すぎて細かい表情は分からないけれど、何となく気まずい思いでそっと携帯を耳に当てた。
『9月28日~、出産予定日だったよね。おめでとうございまーす』
開口一番にそう告げてきた彼に思わず口の端を上げると脱力してベランダに身を預けた。
「・・・・・やっぱり・・・知ってた」
『ひーたんがしっかり記録してたから』
「・・・・・・ちゃんと許可取ったんですか?この花火」
『もちろん。でも・・・これが最後の魔法』
その言葉に疑問感じ、見える筈はないのだけども表情を確認するように視線下の彼を見つめた。
彼もこちらをまっすぐに見つめ上げているようで、多分その口元は微笑んでいる。
どういう意味か問うべきなのか、迷って無言で不動になっていれば、
『千麻ちゃーん・・・・、』
「・・・はい、」
『今ね、めっちゃめちゃキスしたい』
「・・・・・」
『抱きしめて、キスして・・・、こんな手袋取っちゃって、ちゃんと素手で千麻ちゃんの髪を撫でて・・・』
「・・・・・」
『ってかさぁ・・・邪魔なもの全部取っ払って愛し合っちゃいたいんですけどぉ!!』
「・・・・すみません、痴漢電話はご遠慮したいんですが。そしてわざわざ猥褻なセリフだけ全力で叫ばないでください」
そう、電話の向こうからも響いた声がリアルな音声としても反対の耳に届いて呆れて笑う。
相変わらず馬鹿だ・・・。
多分微かに噴いた声が聞こえたのだろう、電話の向こうで彼も笑っている気配を感じて。
『千麻ちゃん・・・・・俺、千麻ちゃんが隣にいないと・・一緒にでないと何しても嬉しくないし楽しくない。
一緒に上り詰めなきゃ達成感もなくてさぁ・・・・』
「そう、それで?」
少し上から見下ろすように切り返してみる。
いや、本当に見下ろしているのだけども。
一体どんな言葉遊びで私を言いくるめようとしているのか余裕の反応で聞き流そうとしたのだ。
結果・・・、
本当に彼は私の予想を上回る男だと驚かされることになるんだ。



