夫婦ですが何か?







『HAPPY BIRTHDAY・・・

永遠に・・・・、


俺と千麻ちゃんの子供だよ・・・』







自分が発した名前と、彼の言葉と、抱いている人形の感触。






それをリアルに感じた瞬間に驚くほど脱力してその場に座り込んだ。


自分でも本当に困惑して、


まるで今までずっと纏っていた鉛の塊を外されたような。


そう軽すぎるのだ。


よく分からない開放感と達成感に満ちて、まだ確かに複雑な悲哀もあるのに呑まれるほどじゃない。


コントロール可能な。


唖然としてしばらく馬鹿みたいに座り込んでいて携帯や彼の存在を忘れかけていた。


今はただ何が起きたか分からない自分に意識が走ってしまって。


でも、きっと、


そうなる事も彼はお見通しだったんだ。


呆然としていた自分が一瞬で正気になる。


耳に入り込んだ時期外れな音に一瞬確かめるように不動になって、次の瞬間には立ち上がってベランダに走る。


あり得ない。


本当にあの男は・・・。


冷たい夜風なんて気がつかない程興奮した熱をその身に夜景を映す。


彼のマンションも川沿いに近かったけれど、このマンションはもっとそれに近いんだ。


だから・・・・、


次の瞬間にパッと広がって自分の目に移りこんだ輝きの華やかさに息を飲んだ。






大輪。



金と緑のコントラスト。



その2色が夜空に音を響かせ広がって消えた。






でも・・・・目に焼き付いて耳に残って・・・、


ずっと頭に残って響いていた彼の過去の言葉を掻き消した。


あっ・・・・・解放・・・感。


もう余韻ばかりの煙広がる空を見つめて呆然としていれば、花火の音が強く残る耳にかすかな人の声。


どこかから叫ばれているような響きに耳を澄ませ、更にその姿を探して視線を走らせる。




「千麻ちゃーん!!」




確実に自分の名前だと判断したのとほぼ同時にその姿を何となく、向かいに立つこのマンションより低いビルの屋上に捉えて唖然とした。


気がついてほしいという様に両手を掲げて振っているその姿は、いまだ犯罪者スタイルの彼だと理解する。


目を細めてベランダに張り付いて見下ろしていれば、私が気がついた事を理解した彼がオーバーアクションで自分の手を耳に当てる。


その仕草で自分の携帯が玄関に置きっぱなしだと気がついた。