涙が零れて頬を流れる。
顎まで流れると今度は嗚咽も込み上げて、抱けるはずのなかった存在を仮の姿であってもこの腕に得た気がして胸が熱くなって。
愛おしい。
心底そう思って人形を優しくもしっかり抱きしめた。
そんな瞬間に耳に入る再度の呼びかけ。
『俺は魔法なんて使えない。
でも・・・・俺と千麻ちゃんにしか出来ない事があって。
それは2人で偉業を成し遂げることより重要で、尊くて・・・』
「・・っ・・・せ・・ん・・」
涙が・・・止まらない。
熱くて、胸の奥から焼けそうで・・・・、
でも不快なそれじゃないの。
『仮初だけど・・・、千麻ちゃんが選んだ生地で、リボンで。
・・・俺譲りのグリーンアイで、・・・俺が縫い合わせた。
触れ合わなくても・・・・、俺と千麻ちゃんが創り出した物でしょう?』
耳を通って、柔らかく浸透していく声と言葉がずっと抱いていて苦しかった黒い物をじりじりと消していく。
声を出しても嗚咽ばかり零れるから馬鹿みたいに、ウンウンと頷いて、そんな姿は彼には見えていないというのに。
それでも理解したように彼は小さく笑って言葉を続けるんだ。
『・・・ねぇ、呼んで・・・千麻ちゃん。
もう姿は無くても・・・・、あの子の存在を確定してあげようよ。
それを出来るのも・・・・俺と千麻ちゃんだけで・・・。
それは・・・・今日であるべきでしょ?
今日しか・・・【3人】の思いが重なる奇跡はないんだよ』
3人・・・、
私と・・・あなたと・・・・・・・・、
この子?
拙くて・・・不完全で、
綻びだらけだった夫婦生活で得た・・・、
一瞬だけの儚い物だったけれど、
2人で成し遂げた・・・、
どの業績より輝かしい物でしたね。
私の一生の誇り・・・。
生涯の。
あなたの従って傍にいてよかった。
そう思える最高の瞬間の形。
『千麻ちゃん・・・・、』
言って。
そんな響き。
ああ、本当にあなたと言う人は・・・。
最後は私に頼らないと奇跡は起こせないとでも言うんですか?
『ーーーーー永遠(とわ)ーーーーーー』
ギュッと愛おしむように人形を抱きしめ、唇を触れるほど近くに寄せるとその名を呼んだ。



