そして携帯に向かって、
「・・・・へたくそ」
『・・・・出来は問題じゃない。・・・・重要なのは、その子の存在をお互いに認めて生かしてあげることだもん』
小さく不貞腐れたような口調で言う彼に、再度人形を至る角度から確認して意地の悪い指摘。
「・・・・どこにあの子の要素を感じればいいんですか?形見と言える物なんてない、ましてや存在してた証すら残ってなかったのにどうしてーーー」
そう、あんな風に絵本仕立てでこの子があの子の代わりだと言われても、感動はしてもまだ存在として感じられない。
この生地だってリボンだって目だって、今日購入したばかりの思い出の品でもない。
どこにあの子の印象を感じればいいのか。
そもそも・・・ある筈ないと、高まっていた気分を自分で下げ始めた瞬間。
『あるじゃん。・・・・・一枚だけ・・・・あった』
言われて一瞬思考がめぐって、それでも深く考えるでもなく思い当るそれ。
気がついて再度確かめるように腕の人形を見つめ半信半疑でそれを確認した。
「・・・・・・もしかして・・・中に?」
『・・・・・・あの子の命って事で、綿と一緒に入れてある』
「・・・・・無くしたと・・・思ってました」
あの時・・・手帳に挟んでおいた唯一のエコー写真。
いくら探しても見つからなくて、本当に存在していた証を失ってしまったと落胆したのを覚えている。
まさか彼の手にあったなんて。
そして今この腕の中の小さな人形の礎として組み込まれている。
写っていたのはまだ、それこそあの文章の様に小さな小さな光の点の様なものだったけれど。
確かな命の存在。
それを写した唯一の、
自分が宿した命の欠片を抱く様に手にしていた人形をギュッと抱きしめた。
『ちなみに、その緑の石は俺たちの結婚指輪に使ったのと同じものなんだよ』
「・・・・・人形は不格好なのに、この目ばかりが高級すぎませんか?」
『・・・・千麻ちゃんが望んだグリーンアイの可愛い子でしょ?』
その問いに思わず口の端を上げクスリと笑うと頷いた。
この子に唯一望んだ物。
「綺麗な・・・・・グリーンアイ。
・・・・・・・誰かさんに似てる」
そうだ・・・本当に誰かさんによく似ている。
その目ばかりは輝かしい程綺麗で見る物を魅了して、なのに本当の姿は不完全で不格好。
寂しがり屋で、アンバランスで、どこか支えていないと不安定で。
この人形その物。
拙く荒い縫い目からは綿の白さも見え隠れして、手足どころか耳に長さも不揃いで。
なのに恐ろしく綺麗なグリーンアイが私を映す。



