『扉をあけて・・・』
その文章まで読んで呆然とする。
どういう事かと視線を泳がせて、それでも答えは得ているのだ。
全て全て合点がいって、全てつじつまが合って納得して頷く。
頷いた拍子に目から涙が零れ落ちて、それを拭い取っても反対からまた零れた。
それでも口の端を上げると放置していた携帯を耳に当て、笑ってしまうくらいの涙声で話しかける。
「・・・・陳腐。・・・文才無いです」
『俺は童話作家じゃないし・・・絵本って結構かいつまんだ文章じゃない?』
「全部・・・・・知ってたんですか?」
『・・・・・ねぇ、早く・・・扉を開けてやってよ』
質問の問いには答えず、それでも含みありに促され涙をぬぐうと玄関に向かって歩き出す。
どこか緊張して、本当にあの子がいるわけでないと知っているのに期待して。
だって、彼が仕掛ける罠はいつだって予想を超えて私の心に作用するから。
薄暗い玄関に明かりをつけるのも忘れ、裸足のまま扉の前に立つと鍵に手をかけた。
ガチャリ。
シンッと静まった玄関に開錠音が響いて、耳に残るそれに緊張を逃して目蓋を閉じる。
心臓が早い。
それを宥めるように息を深く吸ってゆっくり吐きだし、目蓋を開けると扉を開けた。
ふわりと入り込んだ外気。
それに髪が柔らかく遊ばれ、
ゆっくり下した視線が綺麗なグリーンアイとぶつかった。
『Call me,Mam』
【永遠ーとわー】
そう書かれた紙を手に、
床に座った不格好な黒いウサギの人形。
ゆっくりかがんで、お世辞にも上手いと言えない出来のウサギを持ち上げ腕に抱えてみる。
覚えのあるべロアの生地、首に巻かれたレースのリボン。
そして、その目ばかりは嫌に輝きの強い光を反射するグリーンアイ。
きっと・・・・あの宝石店の買い物でしょう?
そう種明かしを心でして、呆れたように眉尻を下げて口の端を上げた。
目蓋を閉じれば涙がポロリポロリと頬を伝って、込み上げてくる嗚咽を何とか飲み込むと鼻をすすった。



