一瞬何が起きたのか呆然としたまま走り去っていく姿を不動で見つめ、それでも思い出したかのように慌てて立ち止まった彼が少しだけこちらに駆け戻って来るとポケットから何かを取り出しこちらに放り投げた。
慌ててそれを受け取るために動きを見せて、何とか手の中に受ければそれは求めていたUSBで。
何がどうなっているのか分からず顔を上げれば驚愕に固まる。
少し離れた位置でサングラスもフードも外した彼が満面の笑みでそこに立っているから。
何で・・・・笑ってるの?
意味がわからない。
困惑でUSBを握ったまま立ち尽くせば、
「千麻ちゃーーーん!!俺・・・魔法使いじゃないけどさぁ・・・」
「・・・はぁっ?」
「でも・・・・・お願いだからっ、・・少しでいいからっ・・
今日だけでいいから俺に夢見て!!」
そう叫ぶと私に手を振って再び走り去る姿。
結局意味が分からずポカンとしたままその姿が見えなくなるまで見送って、しばらくしてバイクのエンジン音が風に運ばれ耳に入る。
いや、
確かに1人で帰る気だったけれど。
置いていきやがった。
そんな事をぼんやりと思って返却されたUSBメモリを見つめた。
「・・・・・・夢って・・・何よ?」
ポツリと彼が去り際に残した要望に小さく突っ込みを入れて。
絶対に叶う筈のない自分の願いをまさか叶えられるはずもないと分かっているのに。
・・・・なのに。
「センチメンタル・・・ね」
また、
この場所で夢を見ろって言うんだから。
一度この場で夢見て破れているというのに。
それでも・・・・・望まれたら従ってしまう。
困った私の習性だと眉尻下げて口の端を上げると、ゆっくり歩き出しながらメモリをジャケットのポケットに戻していった。
いいわ、
・・・・・夢見てあげる。
今日だけの・・・夢。
だって・・・今日は・・・・。



