「『ごめん』とか『許して』とか。・・・謝って、土下座して、それで千麻ちゃんの心が落ち着くならいくらでもする」
違う。
そんな事をしてほしいとは思わない。
そう感じて首を横に振りかければすぐに続いた彼の声。
「でも・・・違うでしょ?千麻ちゃんが欲しいのはただ懺悔の様な謝罪じゃないんだ。
そして生半可な未来の約束でもない。過去の清算も済んでない未来なんて認めないし欲しくない」
「・・・・」
「それでも・・・・許したい。
許して、俺を受け入れたいから・・・・苦しいんだ」
「・・・・・・・・・そうよ」
彼の紡いだ寸分違わぬ答えに同調し見つめた。
正解。
でもそれ以上は答えも分からずそこ止まりの。
その答えを得てもずっと足止めを食らって不変の私たちの関係。
改善の糸口なんて見えなくて、それでも一瞬彼のリハビリに馬鹿みたいに期待して・・・・そしてまた落胆した。
だからもう・・・・無理だ。
「・・・・・自分でも・・・分からないんです。あなたのせいではないと分かっているのに・・・、だから許したいのに・・・・」
「・・・・許し方が分からない?」
彼の結論に小さく数回頷き俯いていく。
きっと、どんなに真剣に誠意を見せて謝られても違う。
謝られても戻らない喪失だから苦しくて辛い。
あの子は・・・・私たちのあの時の最後の繋がりで。
あの小さな希望にかけて縋って・・・・失って。
だからきっと・・・、
「・・・・・違う、・・・方法は・・・知ってるんです」
「・・・・・・どんな?」
私が零した言葉に慌てるでもなくゆっくりと反応した彼が穏やかにその方法を求め。
まっすぐ揺らぐ事なく私を捉える彼に力なく口の端を上げると唯一の方法を口にした。
・・・・・絶対に、実現できるはずもない・・・方法。
「あの子が生き返るような、魔法みたいな奇跡が無い限り・・・
きっと、私はあなたを許せない・・・・」
いくらあなたでも・・・・不可能な方法でしょう?
そう思って、微笑んで背中を向ける。
いつも無理難題ぶつけたあなたに・・・・全力の倍返し。
馬鹿な夢さえ馳せられない実現不可能な願いでしょう?
コンクリートの防波堤をコツコツと歩き始めて、横から吹く風になびく髪を押さえ思う。
この髪もまた短くしようと。
今度こそ全て断ち切ってそして・・・・。
そう思って視線を前に戻した瞬間。
横を走り抜ける姿と視界に入り込んでくるその後ろ姿。



