夫婦ですが何か?




それに慌てて後を追い自分も迷うことなく止める事なくそちらの道を選んだ。


そう、玄関に向かって呼び鈴を鳴らしても【彼】は気がつかない事の方が多いのだ。


そしてその身は大抵・・・。


やはり口数少ない目の前の彼の後について陽の当らない家と塀の間の小道を歩く。


何を思って進んでいるのか。


そんな事を一瞬浮上させている間に短いその道は光り広がる空間に繋がる。


その角を過ぎれば【彼】の領域。


感動すらする、彼が負けを感じ彼女を手放した程の【彼】の彼女への愛情の空間。


彼女を得た今、この空間は私の眼にもどう映る?


少しの緊張で心臓が強く跳ね、そのつま先を一歩光りの下に踏み出した。


ほぼ同時、先にその身を光りの下に置いた彼が『あっ、』と声を響かせた後にクスリと笑う。



「まぁ・・・、許容範囲か」


「はっ?」



車の時からといい、言っている意味が分からないと眉根を寄せたけれどすぐに意味は自分の眼で捉えて納得。


なる程そんな心配か。


確かに許容範囲。


理解すれば確かに「大丈夫かな?」と心配した筈だ。


一瞬困ったように微笑んだ彼が私に視線を落としてからゆっくりと歩み始め、私も少しだけ複雑な心中で彼の後に続いた。


サワサワと緑揺れる庭を進み、さっき水が撒かれたばかりらしい湿った土を踏みしめる。


風が柔らかく吹くと軒下に下げられた風鈴がか細くもリンと鳴り。


思わずその音に「しっ」と静寂を求めたくなる。


そんな光景が縁側の板間に寄り添って存在する。


近づき覗きこんだ彼の何とも複雑な笑み。


それに並んで立つと私もどうしたら正解か考えてしまう。


時間を言えば午前の10時過ぎ。


僅かにその熱を高めてきた程よい気温と吹く風に誘われたのか。




「・・・・・多分、先に寝たのは雛華だね」


「そして、そんな雛華さんに動きが取れなくなった芹さんが自分も眠気に負けたってところでしょうか?」




私と彼が捉えている何とも言えない光景を説明すれば。


多分、【彼】が【彼女】の膝枕で横になり本を読んでいるうちに寝てしまい、体の上に開いたままの本がパラパラと風に遊ばれている。


そして動きが取れなくてなのか、受け入れてなのか、そのままでいた彼女も眠くなったらしく横に倒れている様子。


微笑ましいと言えば微笑ましい。


休日の午前中に縁側で寄り添ってうたた寝しているんだから。